上手な家事の時短術01
上手な家事の時短術01
「時短」という言葉が広まり始めたのは2000年ごろ。当時は家庭の主婦が「家事を合理化する」という意味合いが強かったのですが、時代が変わり、共働きが主流になった今、合理化するもなにも、家事に当てられる時間そのものが減少しています。つまり「限られた時間でいかに家事をするか」が現代流の時短と言えます。家事や育児、仕事と忙しく過ごす中で上手に家事を時短するための考え方やコツを、生活コラムニストのももせいづみさんに伺いました。
ももせいづみさん
生活コラムニスト。日々の暮らしの中から生まれるコラム、忙しくてもゆるりと楽しく暮らすためのアイデア、時短の工夫やレシピなどを執筆。雑誌、テレビ、ラジオなどの幅広いメディアに登場している。新商品、家電、生活用品などの話題にも強い。
「時短しているつもりが、かえって忙しい…」。こんな声をよく聞きます。時短しなきゃと思うあまり、やることに追われてしまっているのがこの状態です。時短の目的は「家事時間を短くすること」ではなく「生活のクオリティを上げること」。家事の本質は、汚れや散らかり(マイナス)を元の状態(ゼロ)に戻すことなので、そもそも汚れも散らかりもなければ、そこは手をつけなくていい「家事のゼロ地点」なのです。時短のポイントは、ゼロ地点も含めたすべてに手をつけるのではなく、汚れや散らかりが目立つマイナス地点を見つけること。ここを効率的にきれいにするのが、上手に時短するコツです。
1日の中で最も忙しい朝。ここを時短するのに役立つのが、朝食準備のひと工夫です。ポイントは「出すだけ」「セルフ」。例えば、テーブルにホットプレートを置き、パン、ジャム、卵などを回りに出しておくだけで、家族が思い思いにパンを焼いたり目玉焼きを作れます。
ご飯とお味噌汁なら、ジャーやお鍋ごとテーブルに置いて、家族によそってもらえば効率的。また、栄養バランスは1食ずつではなく、1日、1ヶ月というトータルスパンで満たされていればOKと考えると、「1食ずつしっかり作らなきゃ」というプレッシャーから解放されます。
最近の家電はとても進化しています。ボタンひとつでローストや煮込みなどの本格料理ができるオーブンレンジ、かまどで炊いたようなご飯が出来上がる炊飯器etc…。こうした家電をうまく取り入れれば、手をかけず、しかも失敗なくおいしい料理ができます。
また、火加減を見張らなくてもいい保温調理鍋は、特におすすめです。調理中にキッチンを離れられ、その時間を別の家事に当てられる上に、ちゃんとした煮込み料理を家族に作ってあげることができます。
暮らしの必需品になりつつある食洗機。便利なだけでなく、心理的なストレスをなくす効果もあります。汚れた食器がシンクにたまっていると、「洗わなきゃ」という強迫観念にとらわれますが、食洗機に入れれば洗い物が目に触れなくなり、強迫観念から解放されます。
また、洗う手順や洗い方など、個人のこだわりが出やすいのが食器洗い。ですが、食洗機に洗ってもらえば均一に洗い上がりますし、高温のお湯で洗浄するので衛生的。ストレス予防だけでなく、生活の質アップにもつながります。
毎日大量に出る洗濯物。つい回数を減らしたくなりますが、「タオルは1週間同じものを使って」と家族に強いるのも現実的ではありません。そこで取り入れたいのが、洗濯物のサイズダウン。例えば、バスタオルを大判から中判に切り替える、厚手のものを薄手に変えるなど、少しでも体積を小さくすると、洗濯物のかさが小さくなります。
また、少し使っただけで汚れてもいないのに「置く所がないから」と洗濯機に入れてしまう習慣をあらためてみては。まだ着れる・使える物を入れる専用のカゴを用意したり、置き場所を決めておき、不要な洗濯物を減らしてみましょう。
意外と時間がかかる「洗濯物を干す」「取り込む」というプロセス。ここを時短するには、「洗う」「干す」「取り込んで収納する」をできるだけ近い場所で行い、ムダな動線をなくすのがポイントです。
例えば、ベランダではなく、洗濯機の前に物干しやハンガーを持ち込んでその場で直接干せば、お天気が悪い日はそのまま室内で干すこともでき、梅雨時には除湿機を置けばよく乾きます。キャスター付きの室内用物干しなら移動も簡単で、外干しするときにも便利。取り込むときは、キャスター付き収納などを洗濯物のそばに連れていき、取り込んだものを直に収納すれば効率的です。
ひと昔前は、夜に洗濯をするのはタブーでしたが、建物や洗濯機の静音性が高まった現在は、むしろ夜洗濯のほうがメリットがあると言えます。まず、お風呂の残り湯が温かいうちに使えること。残り湯は放置すれば雑菌が繁殖しやすくなりますが、入浴後すぐなら比較的清潔。酵素入り洗剤は37℃前後の水温でより高い洗い落とし効果を発揮するので、残り湯は洗濯物に最適なのです。
夜は家族がそろっているので、手を借りやすいのも長所。「ハンカチきれいになったよ。干してあげようね」などと、お子さんを誘ってみては。
頭の中で「あれやらなきゃ、これやらなきゃ」と焦るのは、見えない家事負担となります。たとえば、シンクに洗い物があると「洗わなくちゃ」と考えてしまいますが、前述の通り、食洗機の中に入れて見えなくなれば、心理的な負担が和らぐことも。また、頭の中で家事を考える「インナー家事」を減らすには、やらねばならないことを考えるのではなく、やらないことを決めることが大事。「今日やらなくてもどうにかなることは思い切ってやらない」と、発想を変えると心のゆとりにつなげられます。
やらないことを決めたら、「その日やりたい家事」を決めます。無理なくできるよう2〜3つに絞ってスケジュール帳などに書き出します。ただし、書き出すのは前日ではなくその日の朝。洗濯や買い物など、家事はお天気に左右されることが多いからです。当日の空模様をみながら「今日はこれ!」と決めましょう。やりたいことも、あらかじめ作業時間を決めておき、時間がきたら途中でも終了させたり、好きな曲が1曲分終わったらすっぱりやめる「タイムキーピング」が大切です。集中して取り組むことができ、オンとオフをしっかり切り替えることで、暮らしの質を高めることができます。
決めておいた家事が終了したら、スケジュール帳の書き出した所に大きな花丸をつけると達成感が増します。やり残したことがあったら、次の日に繰り越します。何日も繰り越すようなら、それが自分一人ではこなしきれない家事。家族に「これだけお願い」と頼んでみてはいかがでしょうか。
次回は、家族をうまく巻き込むコツや掃除・片付けなどをテーマにした内容をご紹介します(6月下旬配信予定)