JAPANESE SAKE 入門~いつもの料理とマリアージュを楽しむ~
JAPANESE SAKE 入門
~いつもの料理とマリアージュを楽しむ~
若者だけでなく、海外でも
注目を浴び始めた日本酒。
お米と水だけでつくられたピュアなリカーが、
心も体も幸せにしてくれる。
知れば知るほど
おいしくなる日本酒の世界を、どうぞ。
Japanese Sake Guide
ワイングラスに注がれる透明な液体。果物のような香りがほのかに立ちのぼり、気持ちをほんのり明るくしてくれる。日本酒をおちょこではなく、グラスに注いでイタリアンやフレンチとともに楽しむスタイルが、女性たちの間で人気だ。それもそのはず。シュワシュワとはじけるスパークリング系の日本酒、果物やお菓子と一緒に楽しむスイーツ系の日本酒など、さまざまなタイプが続々と登場し、おいしいもの好きを喜ばせている。また、美肌に効果があるとされるアミノ酸が豊富なのもうれしいところ。日本酒って、女性のためにあるのかもしれない。
ライター 高野 朋美
日本酒をこよなく愛するビジネスライター。以前は日本酒がまったく飲めなかったが、お酒くさい、悪酔いするという従来の日本酒のイメージを180度変える美酒と出会い、日本酒の世界にはまり始める。2010年、日本酒好きの女性をネットワークした「酒女倶楽部」を発足。「日本酒はオンナの飲み物」を合言葉に、日本酒会などを開催。
共著 オンナの日本酒~女性のハートが選ぶお勧めの酒~
Japanese Sake Guide
「日本酒といえば一升瓶」というイメージは、もはや一昔前のもの。ワインやリキュールを思わせるスタイリッシュなボトルや、“ジャケ買い”したくなるおしゃれなラベルの日本酒が出回っている。米と水だけで造られているのに、キレのあるドライな味わいから、まるでお砂糖みたいな甘い香味のものまで、味のバリエーションがこの上なく幅広いのもおもしろい。花の酵母を使ったものやフルーティーな日本酒など、1人で飲んでも大勢で飲んでも楽しめるラインナップがそろっている。どれを飲んでいいか分からないときは、まずおしゃれさを感じる1本を選んでみては?
シャンパンと同じ「瓶内二次発酵」によって造られた、辛口のスパークリング日本酒。この日本酒のサプライズは、ほんのりロゼ色であること。赤色酵母による色付けに、きめ細かな泡は発酵による微炭酸と、ナチュラルなところにも注目したい。パーティーなどの華やかな席にもぴったり!
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雨後の月 スパークリングアジア 微紅
330ml 648円
上品な甘酸っぱさが口の中に広がる。「瓶内二次発酵」によるスパークリング日本酒のパイオニア的商品。2018年には発売から20年を迎えるが、今も根強い人気を誇る。「ワイングラスでおいしい日本酒アワード」で3年続けて最高金賞に。アルコール分5%と低めなので、強いお酒が苦手な人でも楽しめる。
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一ノ蔵 発泡清酒 すず音
300ml 772円
ドイツの貴腐ワインのように甘い日本酒。蜜のようなコクの中に、お米のほんのりとしたうま味を感じる。ドライフルーツやチーズなどとの相性も良く、長い夜をゆっくりと過ごしたいときに飲みたくなる。日本酒とは思えないアートなラベルも人気。1枚の絵画を鑑賞しているような気分になる。
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笑四季貴醸酒 MONSOON山田錦
720ml 1,836円
9人の若き蔵人たちが生み出した、スリムボトルのお酒。同世代の若者たちに気軽に飲んでほしいと造られた。一年中飲めるレギュラーボトルを始め、季節ごとに登場するシーズン限定酒が人気だ。御前酒(ごぜんしゅ)とは、かつて藩主に献上された「御膳酒」から銘を受けた。
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GOZENSHU9(NINE)レギュラーボトル
500ml 972円、1800ml 2,802円
製法や出荷の時期で変わる「お酒の種類」
●生酒
酵母の働きを止める加熱処理(火入れ)をしていないお酒。酵母が生きているのでフレッシュ感がある。味が変化しやすいので保存は冷蔵庫で。
●生酛(きもと)
昔ながらの造り方で、お米をすり潰す「山卸し(やまおろし)」という工程によって自然な発酵を促す。力強い味わいがあり、アルコール感もしっかりしている。燗にしてもおいしい。
●山廃(やまはい)
生酛の酒造工程である「山卸し」を廃したので、こう呼ばれる。酵素の力でお米を溶かし、時間をかけて発酵を進める。その分、メリハリのある味に仕上がる。
●うすにごり
発酵したお酒をゆるくこし、あえてうっすらと白濁させたお酒。お米のうま味や甘みが引き立つほか、器に注いだときの雪のような白さが映える。
●荒走り
お酒をしぼるときに最初に出てくるのが荒走り。しぼり立ての新鮮さがあり、酵母による炭酸感が残っているものもある。味わいはみずみずしくて若々しい。
●冷やおろし
冬に造ったお酒をひと夏寝かせ、秋風が吹くころに出荷するお酒。造り立てのころのとがった味わいから角が取れ、まろやかな丸みを帯びている。
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ひとことで日本酒と言っても、味も香りも千差万別。一つとして同じ味の日本酒はないと言ってもいいくらい、多彩なテイストを誇っている。
とはいえ、何らかの味の基準があったほうが、チョイスがスムーズだし楽しい。そんなときに意識してみたいのが、日本酒の4タイプ。たくさんある日本酒を、味と香りで大きく分けたものだ。お店で選ぶとき、「このお酒は、4タイプでいくとどのタイプ?」と考えてみると、飲みたいお酒を選びやすくなる。
自分の好みに合わせて選ぶほか、その日の気分で選んでみるのもおもしろい。「元気を出したいから、今夜はコクのあるタイプを飲んで、ガツンとパワーをもらおう」など。タイプ違いのお酒を何本か常備しておくと、急なお客さまが来たときでも、相手の好みに応じたお酒を出せる。
「高価な日本酒は良い日本酒」と思いがちだが、価格とおいしさは必ずしも比例しないのが日本酒の奥深いところ。米の良さを最大限に引き出し、手を抜かずに造られたお酒は、安価であっても最高においしい。いい日本酒に出会うには、たくさんの種類を試してみること。酒造で利き酒体験をしたり、日本酒のイベントに参加すると、リーズナブルに少しずつ多種多様なお酒を楽しめるのでおすすめだ。
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そのまま飲んでもおいしいけど、料理と合わせる「マリアージュ」を楽しむのもまた、日本酒との上手なたわむれ方。どんなお酒がどんな料理に合うのかを知っておくと、日本酒選びがぐっとスムーズになる。マリアージュの基本は「あっさりとした味わいの日本酒には、あっさりとした料理を」「こってりとした味わいの日本酒には、こってりとした料理を」。こうすることで、お酒と料理がケンカせず、絶妙なハーモニーを奏でてくれる。
(香りが華やかでみずみずしい)
お酒のもつ香り高さを存分に楽しめるよう、魚介類や野菜の料理など、やさしい味わいの料理と合わせるのがベター。野菜の天ぷらなど、軽やかな揚げ物ならお酒の華やかさを邪魔しない。スパークリング系の日本酒なら、マカロンやフルーツといったライトなスイーツと合わせてみてもおもしろい。クリームシチューや八宝菜などもおすすめ。
Recommended!
八戸酒造(青森県)
陸奥八仙(むつはっせん) ピンクラベル吟醸酒
720ml 1,620円、1,800ml 3,024円
華やかな香りとフルーティーな味わいが特徴で、みずみずしいフレッシュジュースのような印象さえ受ける。「インターナショナルワインチャレンジ2016」のSAKE部門で金メダルを受賞。
アボカドとエビのサラダ
山菜の天ぷら
(すっきりとした切れ味がある)
日本酒自体が繊細な味わいのため、料理も繊細な味のものがよく合う。和食との相性が良く、お刺身、出汁のきいた一品料理や鍋物、豆腐料理などがよく合う。洋食ならサラダやテリーヌ、コンソメ仕立ての煮込み料理などが相性の良いメニュー。逆に、風味の強い料理、オイリーな料理と合わせると、日本酒のデリケートな香味が負けてしまうことも。
Recommended!
若波酒造合名会社(福岡県)
特別純米酒 蜻蛉(とんぼ)
720ml 1,296円、1,800ml 2,484円
水のような透明感があり、すっと喉元を通り過ぎていく軽やかさがある。クセのない味わいなので、たんぱくな料理や、蕎麦やうどんなどとも合う。重たいお酒を飲みたくない日にぴったり。
だし巻き卵
ロールキャベツ
(熟した深みのある味わい)
このタイプはお酒の自己主張が強いため、料理もインパクトのある味わいのものが合う。ソースやたれが濃厚なものなど、少々味が濃い一品と合わせても、お酒の香りも味わいも崩れない。チョコレートやドライフルーツなどリッチな味わいのおつまみとも合う。鴨のロースト、甘酢あんかけなどとの相性も良い。
Recommended!
久保本家酒造(奈良県)
睡龍(すいりゅう) きもと純米 熟成酒 22BY
1800ml 3,400円
昔ながらの生酛造りで醸された、フルボディ感のある1本。冷やで飲むほか、燗をつけてあたためると、味わいがまろやかになる。蔵元の久保本家は約300年続く日本酒造りの老舗。
うな重
ビーフシチュー
(こってりとした濃いめのうま味)
しっかりした味付けの料理と合わせても負けないだけのパンチがあるので、こってりした和食や洋食と相性が良い。お酒に含まれるほどよい酸味が口の中をすっきりと洗ってくれるので、とんかつやフライドチキン、ギョーザなどのオイリーな料理とも合う。そのほか、しょうゆベースの煮物や鍋料理などともマッチングする。
Recommended!
名手酒造店(和歌山県)
黒牛 無濾過純米本生原酒 中取り
720ml 1,534円、1800ml 3,078円
香りは控えめだが、ひと口飲むとしっかりとしたうま味と酸味が漂ってくる。「中取り」とは、日本酒をしぼるときの中間部分。最も酒質が安定したおいしい部分ともいえる。
とんかつ
すき焼き
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4タイプのお酒から、好みの1本を選び出すときに役立つのが「ラベル」。味の参考になる情報が、ここにギュッと詰まっている。主に「表ラベル」と「裏ラベル」があり、表ラベルには銘柄名やロゴなどがあしらわれているものが多い。情報がたくさん記載されているのは裏ラベル。お店で日本酒のテイスティングをできない場合は、裏ラベルを見れば、ある程度の味の見当をつけることができる。
日本酒によっては、下記の情報がすべて書かれていないものもあるが、ラベルにある項目の意味だけでも知っておけば、自己セレクトがぐっと楽しくなる。
❶ アルコール分
お酒のアルコール度数。高いほどアルコール分が多いので酔いやすい。
❷ 醸造アルコール
香味を調整するために入れるアルコール。
❸ 品目
日本酒、あるいは清酒と書かれている。
❹ 製造年月日
日本酒を容器に詰めた年月。平成29年3月に瓶詰めしたものなら「29.3」と表示される。
❺ 特定名称
清酒の分類。純米吟醸酒、大吟醸酒、純米酒など、原料や製法によって名称が変わる。
❻ 原料米の品種
原料に使った酒米の種類。有名なのは山田錦だが、五百万石、雄町などたくさんの種類がある。
❼ 製造者の名称及び製造所の所在地
お酒を造った蔵元がここに表示される。住所からお酒の産地が分かる。
❽ 精米歩合
日本酒造りでは、雑味を減らすために表面を削った米を使う。その削り具合が精米歩合。60%なら米を40%削っている。
❾ 使用酵母
アルコール発酵に使った酵母の名前。酵母はお酒の香味を左右する酒造りのカギ。酵母名をネットなどで検索すると特徴が分かる。
❿ 日本酒度
いわゆる「辛口」「甘口」の目安。日本酒の糖度ともいえる。プラスなら甘さが少なく、マイナスなら甘さが多い。
⓫ 酸度
日本酒に含まれる酸の量。数値が多いほど酸の量が多く濃淡の目安になる。
⓬ アミノ酸度
日本酒に含まれるアミノ酸の量。アミノ酸が多いとうま味が増し、少ないとあっさりする。