Niksen

オランダ発のリラックス法で
穏やかな暮らし、質の高い仕事を。

コロナ禍でヒュッゲと並んで話題になったオランダの「 Niksen(ニクセン)」。
家にいるとストレスが溜まったり、ついつい頑張りすぎて疲れてしまったり、仕事でなかなかアイデアが思い浮かばない方はぜひ身につけておきたいリラックス法です。今回は、『週末は、Niksen。』の著者でオランダ在住のライター・山本直子さんに、ニクセンのメリットや実践方法、オランダのライフスタイルをご紹介していただきます。

ライター 山本直子さん

慶応義塾大学文学部卒業後、シンクタンクで証券アナリストとして勤務。その後日本、中国、マレーシア、シンガポールで経済記者を経て2004年よりオランダ在住。オランダ人の働き方やライフスタイルをネット・雑誌・ラジオなどで紹介している。

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ニクセンとは?

欧米や日本でも注目のキーワード

忙しい毎日、私たちのスケジュール帳は週末も予定がびっちり。少しはゆっくりしたいなあ……と思いつつ、コロナ禍でヒマな時間ができると、途端に落ち着かない気持ちになってしまう人も多いのではないでしょうか?私たちはついつい空白の時間をさらに予定で埋めてしまい、息つく間もなくストレスをためてしまいがちです。そんな中、注目されているのがオランダ発のリラックス法「ニクセン」です。2019年に『ニューヨークタイムズ』で取り上げられてから、欧米で一気に話題になりました。私も日本のメディアでこれを紹介したところ、多くの人から「私たちにニクセンは必要!」「コロナ禍にこそニクセンしたい」という声が上がりました。仕事に家事に人付き合いに……頑張りすぎてしまう日本人には、特に意識して取り入れたいリラックス法です。

オランダ語でなにもしないを意味する

「Niksen(ニクセン)」は、オランダ語で「なにもしない」を意味する言葉です。なにもせず、なにも生み出さないこと。予定、義務感、生産性、期待といったことから自分を解放して、ボーッとすることです。これは、オランダ人の日常生活の中でも見られるものですが、仕事のストレスによる「バーンアウト(燃え尽き症候群)」の対処セラピーとしても使われています。こうしたセラピーでは、まず手帳に空白の時間をつくり、その時間になにもしないことから始めるのです。ニクセンは毎日、数分間でもいいのです。いつでもどこでも、そして1人でも実践できるので、余計な労力やコストはかかりません。慌ただしい日本人の生活にも無理なく取り込めるものです。


ニクセンのうれしいメリット

自律神経が整い、免疫力アップ

ニクセンはなぜストレス解消につながるのでしょうか?それは、何もせずにボーッとしているとき、「幸せホルモン」と呼ばれるセロトニンが分泌されることによります。これが分泌されると、自律神経が整い、私たちの心拍や呼吸が落ち着き、ポジティブな気持ちになれるのです。自律神経は内臓の動きや呼吸など、私たちの無意識の活動を司っています。このため、自律神経が整うと、血流もよくなり、細胞への栄養素や酸素の供給が活発化するほか、病原菌と戦う免疫細胞が運ばれ、身体の免疫力も高まります。つまり、ニクセンは心身が活力を取り戻すのを助けるのです。

いいアイデアが思い浮かぶ

ニクセンは「ひらめき」を生む効果もあります。これは、私たちがボーッとしている間にも脳が活動を続けていることによるものです。このときの脳の活動は「デフォルト・モード・ネットワーク」と呼ばれていて、脳が記憶の断片をつなぎ合わせたり、情報を処理したりするのに役立っているようなのです。散歩や入浴の間ボーッとしているときに、いいアイデアが浮かんだ経験のある人も多いのではないでしょうか?もちろん、集中して物事を考えたり、情報をインプットしたりすることも大切ですが、行き詰まったら迷わずニクセンを試みましょう。


山本さんが実感!ステイホーム中のニクセン効果

コロナ禍で外出がままならない中、ずーっと家に籠っていると、1日中のんべんだらりとパソコンの前に座りがちです。そこで、私はタイマーを使って仕事と休憩の時間を区切り、休憩の時間にはパソコンの前を離れて窓辺でボーッとすることにしました。25分間仕事に集中したら、5分間ニクセンするのです。はじめのうち、仕事を途中でストップしてニクセンすることは難しかったのですが、そのうち自宅勤務中のリズムになってきました。ボーッとする時間を入れることで、仕事の時間の集中力が格段に上がったのが感じられます。これにより1日にやりたかったことが大体終えられるようになり、充実感を味わえるようにもなりました。


すぐにできるニクセンの実践方法

(1)窓の外をボーッと眺める

仕事の合間や通勤電車の中など、窓の外を1分間でも眺めてみましょう。今日の雲の形や周りの木々の様子、飛んでいる鳥の姿など、普段は目に留めていなかったものを眺めながらボーッとすると、自然と呼吸や心拍数が整います。

(2)家事や散歩など、ながらニクセン

なにもしないのが辛いという人は、なにかをしながらでもニクセンできます。例えば、洗濯物を畳んだり、お皿を洗ったり、散歩をしたり。大切なのは、自分が抱えている問題や予定をいったん脇に置いて、頭の中をボーッとさせることなのです。

(3)スケジュールに空白をつくる

バーンアウトの対処セラピーでも、まずはスケジュールに空白の時間をつくることから始めます。そして、その時間をニクセンに充てます。毎日数分間から始めて、1日に10分、1週間に数時間と、だんだん時間を延ばしていくのが効果的です。

(4)リラックスできる環境を整える

ソファの近くにステレオセットを置いてみたり、窓辺に椅子を設置したり、キンキン明るい照明をほの暗い、暖かい光に変えてみたり……おうちの中でニクセンしやすい環境を整えてみましょう。花や観葉植物を飾るのもいいアイデアです。

(5)気に留めるべきことを減らす

頭の中を空っぽにするためには、気に留めるべきことを減らすのも効果的です。例えば、よく探し回る鍵やスマホ、メガネなどはいつも決まった場所に置いたり、今日やりたい事をすべて紙に書いておいたりすれば、脳の負担を減らすことができます。

(6)スマホをオフにする

ちょっとしたすき間時間にスマホを見るのは、脳を疲れさせます。通勤電車の中や食事中、夕食後など、日常生活の中でスマホを見ない時間を意識的につくりましょう。スマホの音声や振動をオフにするだけでも、反射的にスマホを見る回数が減ります。


山本さんが実践!ステイホーム中のニクセン

ストレスがたまりがちなステイホーム中には、ピアノを弾いて気分転換をしています。ピアノも難しい曲を練習するときには集中力が要りますが、セミオートマチックに弾ける曲を弾くことはニクセンになります。仕事の休憩に香を立てて煙の中でボーッとしたり、テーブルにちょっとした花をかざって眺めたりするのもニクセンするのを助けてくれます。もちろん、コーヒーをゆっくり飲みながら窓の外を眺めるのもお気に入りのニクセン。ちょっといいコーヒー豆を買ったりして、豊かなひとときを楽しんでいます。


ニクセンとは自分と向き合うこと

自分軸を持った個人主義に目を向けて

自分をいろいろなものから解放してニクセンするためには、時間の使い方や行動を自分でコントロールすることが必要です。そのためには、他人の目や他人の都合をあまり気にせず、自分が大事だと思うことを優先する「自分軸」が必要です。自分軸があれば、スマホのメッセージに即答しないという選択もできるし、定時に仕事を終わらせた後は、自分の心身を休ませたり、家族との時間を優先させたりもできます。自分軸を中心にして、人生のプライオリティを大切にした生活は、人々に満足感や幸福感を与えます。個人主義の行き届いたオランダで国民の幸福度が高いのも、こうしたことが背景にあるのです。日本人も少しだけ勇気を持って自分軸を強めれば、もっと自分が大事だと思うことに時間や労力を注げるようになり、人生の満足感を高めることができるでしょう。

無理に取り繕うことなく日常を過ごす

ソーシャルネットワーク(SNS)などで他人の「キラキラした人生」を目の当たりにすることが多い中、悲しいことや思い通りにならないことが起こったとき、自分の苦しみが一層みじめに思えるときがあります。しかし、そんなときもSNSでポジティブな自分を演出したり、無理に友達のフィードに応える必要はありません。まずは「ポジティブ」であふれるSNSから距離を置き、1人でニクセンしてみましょう。自分が今置かれている状況を静かに受け入れ、悲しみや苦しみと向き合うのです。自分のフィーリングに合った音楽を聴いたり、美術館で絵画を眺めたり……芸術に触れながらボーッとするのは心を落ち着かせる助けになります。

今の時代こそ孤独が大切!?

スマホを手に取れば、常に誰かと繋がる今、1人で自分と向き合う時間はどんどん少なくなっています。SNSなどから距離を置いて1人になると、途端に心もとない気分になってしまう人も多いかもしれませんが、ときどき孤独な時間を持つことは、自分を振り返り、自分を取り戻すためにとても大切なことなのです。1人になって退屈で手持ち無沙汰の状態は、ニクセンにぴったり。自由気ままに、自分だけの余白の時間を楽しみましょう。短時間でもソファに寝っ転がったり、ぼんやりと音楽を聴いたりすれば、頭が整理されて本来の自分を取り戻せるはず。コミュニケーションであふれている今だからこそ、孤独の時間を大切にしたいものです。


オランダの“ニクセン”なライフスタイル

ニクセン上手なオランダ人の暮らし(1)

「コーヒーを飲みにこない?」――オランダでは、ご近所同士で家に招き合うことが日常茶飯事。ときには食事に招待することもありますが、そんなときも特別な料理を作ったり、部屋を大掃除したりすることはほとんどありません。いつも通りの部屋で、普段通りの食卓をいっしょに楽しむのです。「フライドポテトとサラダ」とか「パンケーキのみ」といった、あまりにもシンプルな夕食メニューに驚かされることもしょっちゅうですが、考えてみれば、大切なのは家族や友人と過ごす楽しい時間です。大切なことを優先すると、やるべきことはシンプルになり、料理や掃除でヘトヘトになることもありません。

ニクセン上手なオランダ人の暮らし(2)

オランダ人は散歩が大好き。コロナでロックダウンになる前から、散歩を日課にしている人がたくさんいます。オフィスにいる間も、ランチを食べた後に公園を歩いたり、仕事の合間に近所を一周したり。週末や休暇中には多くの人が森や公園を散歩しています。天気のいい日には、散歩に出たついでに公園のベンチに座ったり、芝生に寝転がったりして、日光を浴びながらなにもしないひとときを楽しんでいます。中には家からワインとグラスを持ってきて、何時間も芝生の上で「ニクセンタイム」を楽しんでいる人たちも。なんと豊かな時間でしょう!


オランダ流ステイホーム

ロックダウン中、オランダ人がいちばん恋しがったのは、カフェのテラス席で家族や友達とのんびりコーヒーやビールを楽しむことでした。街のカフェは閉まっているので、自宅のバルコニーや庭が大活躍。天気のいい日にはバルコニーや庭の椅子に座って、鳥の声を聴きながらゆっくりお茶を飲んだり、家族とおしゃべりしたり。ぽかぽかと暖かい陽気の中、リラックスしてそのまま居眠りする人も。ロックダウンでも上手にニクセンすれば、ストレスはたまりません。