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Museums
美術館・博物館のプロフェッショナルである学芸員さんに、お気に入りの美術館・博物館を教えていただき、リレー方式で一挙にご紹介します。建築物や展示内容などの見どころもあわせて解説。プロの視点で、一味違う美術館・博物館の楽しみ方を体感してみませんか。近鉄不動産が運営する「あべのハルカス美術館」からスタートします!
高さ日本一の超高層ビルとして知られる大阪の観光名所「あべのハルカス」内の都市型美術館。平日は夜8時まで開館しており、仕事や学校、買い物のあとに立ち寄れる利便性の高さも魅力です。
あべのハルカス美術館は、お陰様で2021年に7周年を迎えることができました。近鉄、JR、地下鉄、阪堺電車の各駅からアクセスしやすいターミナル立地を生かし、様々な生活スタイルや感性を持つ方々のニーズに応えられるよう、洋の東西を問わず、また古美術から現代アートまで、幅広い分野の展覧会を年間5~6本開催しています。 2021年7月から9月まで「ポーラ美術館コレクション展 モネ、ルノワールからピカソ、シャガールまで」を開催しており、秋以降も「tupera tuperaのかおてん.」「コレクター福富太郎の眼」「イスラエル博物館所蔵 印象派・光の系譜」の順で開催を予定しています。
超高層ビルの16階に位置しながら、防犯、防災、空調、展示環境などの厳しい条件をクリアし、国宝・重要文化財も展示可能な本格的な美術館として、上質で快適な鑑賞の場をご提供しています。 また、あべのハルカス内には地上300mの展望台「ハルカス300」や日本最大の営業面積を持つ百貨店としてオープンした「あべのハルカス近鉄本店」などがあり、近隣には天王寺公園エントランスエリア「てんしば」や大阪市立美術館、天王寺動物園もあり、休日を満喫することができます。
フィンセント・ファン・ゴッホ
《ヴィゲラ運河にかかるグレーズ橋》
1888年 ポーラ美術館蔵
小鳥がさえずり、緑の美しい箱根の森の中にあるポーラ美術館は、ポーラグループのオーナーであった鈴木常司氏が、優れた鑑識眼で長年かけて収集した絵画、陶磁器などのコレクションを所蔵する美術館です。中でも、西洋絵画は日本で屈指の質と量を誇ります。この展覧会では、古典主義に傾いていたルノワールが、柔らかいタッチと明るい色彩による表現に回帰した1890年頃の名作《レースの帽子の少女》を筆頭に、モネ、ゴッホ、ピカソ、モディリアーニといった、印象派、後期印象派、エコール・ド・パリの画家たちの名品の数々を愉しむことができます。
[住]大阪市阿倍野区阿倍野筋1-1-43 あべのハルカス16階
Tel. 06-4399-9050
[時]火~金10:00~20:00 月土日祝10:00~18:00*入館は閉館30分前まで
[休]展示替期間、年末年始
[料]ポーラ美術館コレクション展 一般当日1,500円
※入館料は展覧会により異なる
イラストレーター、絵本作家として国内外から高い評価を得ている画家の安野光雅先生。今から50年以上前、私が幼稚園児だったころ、初めて親に買ってもらった絵本が、安野光雅先生の『さかさま』でした。以来、先生のファンでしたが、惜しくも昨年の12月、天寿を全うされました。先生の生まれ故郷、島根県津和野町の安野光雅美術館は、初期代表作の絵本の原画をはじめ、本の装丁、芝居のポスターなど多方面で活躍された先生の原画を多数所蔵しており、年間を通じて鑑賞することができます。津和野の豊かな自然に囲まれた美術館内には、昭和初期の小学校の教室が再現されており、懐かしくも、大好きな美術館です。
美しい自然に囲まれた島根県津和野町にある町立の美術館。海外でも高く評価されている安野光雅の作品を愉しむことができ、ノスタルジックな時間を家族で味わうことのできる場所です。
安野光雅美術館はずっと昔からそこにあったような、町並みに溶け込むような美術館を建ててほしいという安野光雅さんの思いがこもっています。学習棟にある「昔の教室」は、昭和初期の木造の教室を再現。ガラスの入った窓に囲まれた教室には大きな黒板、二人掛けの机と椅子があります。部屋に一歩足を踏み入れれば、大人たちは空想を育んだ子どもの時代に思いを馳せ、子どもたちは目新しい教室に想像力をかき立てられる、そんな温かな空間がここには広がっています。
学習棟には、安野光雅さんの思いがたくさん詰まっていて、プラネタリウムもそのひとつです。 「空想を育む大切さを1人でも多くの方に理解してほしい」という安野さんの思いからこのプラネタリウムを導入。空想することの楽しさと、科学的視野を広げる学びの場を提供しています。当館独自の番組は、「津和野の四季」「暦」、安野作品「天動説の絵本」で編成。番組の始めと終わりは安野さん自ら「空想すること」への思いを語っています。収容人数は定員50名(現在はコロナウィルス感染症対策のため25名)。
安野光雅さんはとても気さくな方でした。お話もとても面白く、思わずクスッと笑ってしまうようなエピソードを入れて、その場を和ませてくださっていました。「絵本作家」としてご存じの方が多いと思います。しかしながら、その仕事は装丁画家・エッセイスト・イラストレーターなどといった多彩な顔を持つ画家です。また、美術だけにとどまらず、科学・数学・文学などに造詣が深く、その好奇心が多くの作品を描き出す原動力となっていたのだなと思います。安野光雅さんの作品は何度も見たくなります。それは、絵そのものに惹かれる所もあれば、見る度に新しい発見があるからです。一人でじっくり見るのもいいけれど、数人で語り合いながら見るのも楽しい、そんなたくさんの魅力が詰まっています。
シェイクスピア劇場 十二夜
画像提供:安野光雅美術館
本作品は「ロミオとジュリエット」や「ハムレット」などの代表作で知られるイギリス人劇作家ウィリアム・シェイクスピア(1564~1616年)の戯曲をテーマにしたものです。作品はアルシュ紙をベースに水彩画で描かれており、金箔を使ったり、紙を貼り重ねたり、時には絵具の厚塗りで質感量感を感じさせます。また、描かれた絵の構図は、まるで劇場の観客席から舞台の上を観ているような臨場感を与えます。本展では、『繪本 シェイクスピア劇場』に収録された42点の作品にエッセイを添えて展示。また、作品の中から数点、拡大版レプリカ〈Digital ANNO〉も見ることができます。作品の精細な世界が楽しめ、安野光雅さんの手法がより分かり易くなっています。『片想い百人一首』『さかさま』『野の花と小人たち』などの作品も併せて展示され、安野光雅の多様な作品世界に浸ることができます。
[住]島根県鹿足郡津和野町後田イ60‐1
Tel. 0856-72-4155
[時]9:00~17:00(入館は16:45まで)
[休]木曜(祝日を除く)、12/29~31
[料]一般800円
おすすめは、山口県にある周南市美術博物館です。隣接する音楽・劇場ホール施設などと共に地域の文化交流の場となっています。街の通りから玄関口までの距離も長過ぎず入りやすく、大きな建物が街に溶け込んでいる雰囲気がいいですね。周南市は安野光雅さんが初めて代用教員として働いていた場所です。そして、安野さんと同じく国際アンデルセン賞を受賞されたまど・みちおさんの出身地でもあります。周南市美術博物館ではまど・みちおさんの作品も多く展示されています。安野光雅さんとまど・みちおさんは一緒に仕事もされています(『THE ANIMALS』、『THE MAGIC POCKET』/すえもりブックス発行など)。お二人の作品はとても優しくあたたかい。でも楽しさを忘れていない。共通している点が多いのもおすすめの理由のひとつです。
JR徳山駅から歩いて約20分。徳山藩の登城路を整備した「緑と文化のプロムナード」の先にある文化ゾーンに位置しています。宮崎進、岸田劉生、まど・みちおなど、郷土ゆかりの芸術家の作品や、周南出身の写真家 林忠彦の作品などを展示。
周南市出身の詩人まど・みちおの詩や絵画を紹介している「まど・みちおコーナー」では、人知れず50代はじめの数年間に描いていた抽象画をご覧いただけます。また、館内の「カフェテラスまど」では、池の噴水やまわりの木々の四季折々の風情を眺めながらゆったりとしたひとときを過ごしていただけます。まど・みちおにちなんだ「ちいさなまどセット」や「やぎさんゆうびんアイス」などオリジナルメニューもあります。
麗子像で知られる岸田劉生が満州への旅行の帰りに立ち寄った徳山(現在の周南市)で亡くなっており、「終焉の地」として、徳山で描いた作品を収蔵しています。また、周南市出身の宮崎進の作品については、初期から晩年までを網羅する一大コレクションです。周南市出身の写真家林忠彦の作品を紹介している林忠彦記念室の一角には、林の代表作「太宰治」を撮影した銀座のバー・ルパンのカウンターも再現。さらに、周南の歴史を古代から現代までたどることができる歴史展示室では、江戸時代は徳山藩の城下町であったことなど、この地の今日までの歩みを知ることができます。
トマス・ハーヴェイ夫人 ローザ・ケンティフォリア(キャベツローズ)とローザ・ガリカ(フレンチローズ)の栽培品種(バラ科) 1800年 水彩、紙 キュー王立植物園蔵 (c)The Board of Trustees of the Royal Botanic Gardens, Kew
イギリスの王立植物園「キューガーデン」は世界最大級の規模を誇り、世界遺産にも登録。20万点を超えるボタニカルアートのコレクションを収蔵しています。ボタニカルアートは、薬草の研究に端を発し、植物を科学的な視点から描いたもの。長い歴史の中で芸術的な観点で親しまれるようになりました。本展では、キューガーデンのコレクションを中心に18世紀から19世紀初めのボタニカルアート約100点を展示。キューガーデンの発展に貢献したシャーロット王妃に愛された王室御用達ウェッジウッド社の陶磁器「クイーンズウェア」や家具など約30点もあわせて紹介します。
[住]山口県周南市花畠町10-16
Tel. 0834-22-8880
[時]9:30~17:00(入館は16:30まで)
[休]月曜(祝日の場合はその翌日)、12/29~1/3
[料]常設展観覧料200円 キューガーデン展一般当日1,100円
※企画展観覧料は展覧会により異なる
おすすめは、猪熊弦一郎のふるさと丸亀に開館した丸亀市猪熊弦一郎現代美術館です。猪熊さんは美術館建設にあたり、美術館は「心の病院」として現代社会に欠かせない存在だと考えていたそうです。猪熊さんの考えのもと設計されたこの美術館は、そこかしこに猪熊さんの想いを感じることのできる、癒しの空間です。美術館前の正面ゲートプラザにある巨大な壁画「創造の広場」や、赤・黄色のモニュメントがとても印象的です。ここで記念撮影される姿をよく見かけ、親しまれているなと感じます。また、市内の様々なお店や飲食店などに、猪熊さんがスケッチブックに描いた作品の複製画を展示する企画なども実施され、まち全体で、日常的に猪熊さんの作品が親しまれ、愛されている感じがとても素敵だなと思います。
photo by Yoshiro Masuda
丸亀市ゆかりの画家・猪熊弦一郎の全面的な協力のもと1991年11月に開館。JR丸亀駅前に構える、印象的な建物は建築家の谷口吉生が設計し、館内には猪熊本人から寄贈を受けた約2万点の作品を所蔵。常設展で観覧できるほか、現代美術を中心とした企画展も開催されています。
photo by Yoshiro Masuda
JR丸亀駅前に位置する当館の正面には、幅21.5m、高さ11.5mの猪熊弦一郎による壁画《創造の広場》やオブジェの設置されたゲートプラザがあり、駅前広場と内部空間をゆるやかに結びつけています。自然光を取り込んだ明るく広々とした館内は、1階から3階までの3層構造となっており、美術館に美しい空間を求める猪熊の意思を共有して建築家の谷口吉生が設計しました。
photo by Yoshiro Masuda
猪熊本人から寄贈を受けた、初期から晩年までの約2万点の猪熊作品を所蔵し、常設展で紹介するとともに、現代美術を中心とした企画展を開催しています。生涯を通して、常にフレッシュな気持ちで作品制作に情熱を傾けていた猪熊はこんな言葉を残しています。「解らない絵がいっぱいあったっていいんですよ。勝手に自分なりに受け止めて、その中に何か感じられる絵が一つあれば。それは理屈じゃなく、自然に身に沁み込んでくるものでね。それがアートなんですよ」※。絵を見た人それぞれで自由に感じ取って楽しんでもらいたいという考えを持っていた猪熊の作品は、鑑賞者に対して、何事にも前向きに、好奇心を持って取り組む気持ちを後押ししてくれるような気がします。
※「特集 地域再生 丸亀市猪熊弦一郎現代美術館<MIMOCA>を巡って」坂野長美、『SIGNS in Japan』1993年No.1 p.38、1993年3月15日発行より
ニューヨークの猪熊弦一郎、写真提供 文藝春秋
猪熊弦一郎は1955年からおよそ20年間、世界中からアーティストが集まり、エネルギーにあふれたニューヨークで暮らしていました。本展では、猪熊のニューヨーク時代の画業と共に、猪熊が残した写真や8ミリ映像なども紹介します。また、編集者の岡本仁氏を「編集長」として、展覧会のキュレーションや執筆等で欧米の近現代の芸術文化を日本に伝えてきた河内タカ氏を「副編集長」として迎え、展覧会を「編集」していただきました。猪熊作品と資料によって、雑誌をめくるように楽しくテンポ良く紹介されるのも見どころのひとつです。
photo by Yoshiro Masuda
[住]香川県丸亀市浜町80-1
Tel. 0877-24-7755
[時] 10:00〜18:00(入館は17:30まで)
[休]月曜(祝日の場合はその翌日)、12/25~12/31、臨時休館日
[料]常設展観覧料一般300円 ニューヨーク展一般当日950円
※企画展観覧料は展覧会により異なる
川島猛アートファクトリー です。1963年に渡米し、50年以上ニューヨークで制作活動をした川島猛(1943-)氏が帰国して故郷の高松市に設立した美術館。元々工場だった広大な建物内には多くの作品が展示され、窓からは瀬戸内海を眺めることができます。ぜひ訪れていただきたい場所です。
photo by Yoshiro Masuda
現代美術作家の川島猛は、1963年、33才でニューヨークに渡米し、2年後の1965年にはニューヨーク近代美術館の「現代日本絵画彫刻」展でRed and Blackを展示。Red and Blackシリーズの一つがニューヨーク近代美術館の永久保存作品となっています。
当館は、医療機器の部品などを製造していた元工場を活用。1963年に渡米し、53年間制作活動の拠点だったニューヨークから2016年に帰国した川島猛の制作現場であり、作品を展示する美術館でもあります。現在もこの場所で日々制作をしていることと元工場ということから「川島猛アートファクトリー」という名称にしました。美術館としては最小限の改装とし、床と天井などをそのまま残すことで工場だった頃の趣と川島猛の作品が交錯した空間となっています。塗り床のため展示作品が床にも映ります。また、瀬戸内の海と島々が見える五色台の麓にあり山と海、緑と青に囲まれた「海の見える美術館」であることも大きな特徴です。
川島の魅力は、チャーミングで優しく、気遣いが細やかなこと。そして、アートに対してはパワフルでエネルギーがすごいことが挙げられます。作品を描いている時の目は今も20代30代の頃の眼光とまったく変わらずとてもエネルギーを感じます。今も少年の頃のように絵を描くことを楽しんでいる川島の作品は、見ていると心躍るハッピーな作品です。また、川島の作品は抽象的な作品なので、お客様に「これは何を描いているのですか?」と聞かれることがあるのですが、その時川島は何かを答えるのではなく問いかけるんです。「何に見えますか?どういう風に見えますか?何を感じますか?」と。見る人に自由に見て自然に感じてほしい。それが川島の作品なのです。
N.Y.Green and Black
渡米後の「Red and Black」シリーズからはじまり「Blue and White」「Dreamland」「Kaleidoscope」シリーズ、日本に帰国してからの「宇宙」シリーズと時代と共に変化してきた作品を展示しています。その変化は川島猛の生き方そのものが感じられます。 今回展示の「N.Y.Green and Black」は1971年以来、50年ぶりに日本で展示します。
[住]香川県高松市亀水町1411
Tel. 087-802-6888
[時]火・木・土曜の10:00〜16:00
[休]月・水・金・日曜(特別休館・開館日有り)
[料]一般1,000円