Ceramic art

永く愛用できる美しい器や個性的な器を体感

民藝の聖地 島根の器に続いて、そのお隣「鳥取」の器に注目。鳥取も島根と並んで民藝運動が活発に行われ、器好き必見の窯元がそろい、現在も手仕事の美が感じられます。後編では、優しく淡い色合いと美しいフォルムが魅力的な「延興寺窯」と鳥取の器の魅力が体感できる「KAJICURRY」をご紹介します。

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延興寺窯(鳥取県岩美町)

シンプルでいて温かみがあり、使い続けるうちに心がほっと和む存在に。そんな永く愛用できる器たちが揃う延興寺窯。窯主の山下清志さんが三女の裕代さんと共に、地元で採れる原料を用いた昔ながらのスタイルで、素朴で美しい暮らしの器をつくり続けています。


延興寺窯の器たち

丹波立杭焼の陶芸家・生田和孝氏のもとで修業した山下さん。表面を削って多面体のようなフォルムとなる「面取」やヘラで削った均等な模様が印象的な「鎬(しのぎ)」といった技法は、師匠から自然と受け継いだものだそう。面取や鎬によるモダンなデザインに、穏やかな色合いの釉薬がマッチしたポットは洗練された雰囲気を醸し出しています。
瑠璃釉面取ポット・白釉面取ポット・瑠璃釉鎬ポット各9,350円

山下さんは、朝鮮半島の李朝時代の工芸品からインスピレーションを受けて美しさを追求。「李朝時代の工芸品は魅力的な物が多いですね。その美しさを自分なりに汲み取って、現代の生活に合うものを作陶しています。釉薬も白なら李朝時代の白磁のような温かみのある白にこだわっています」。茶碗やマグカップ、湯呑ひとつひとつに、山下さん独自の美意識が感じられます。
白釉鎬碗3,300円/海鼠(なまこ)釉鎬マグカップ3,300円/瑠璃釉面取湯呑(小)2,420円/白釉面取湯呑(大)2,750円

「テーブルウェアとして毎日使っても飽きが来ないことが大事。食卓がうるさくならないシンプルさ、すっきりとした器が理想的ですね」と山下さん。温もりを感じるホワイトのシンプルなお皿や、味わい深い黒釉を纏った独特の形を持つ楕円皿、落ち着いた色合いで使い勝手のよいプレートなど、暮らしにすっと馴染む器が多いのも延興寺窯の魅力です。
黒釉楕円皿3,080円/白釉線刻皿(9寸約27cm)17,600円/瑠璃釉プレート皿(6.5寸約20cm)4,400円


延興寺窯の工房

のどかな田園風景が広がる岩美町延興寺の里。ここは山下さんにとって理想的な土地だそう。「丹波立杭での修業後、鳥取民藝を牽引した吉田璋也先生の誘いで、兄と一緒に岩美町で廃絶した磁器『浦富焼』の再興に取り組みました。独立するなら原料のある土地で窯を持ちたい。昔の民窯に近いスタイルで作陶したいと考えていたら、ちょうど延興寺で陶土が見つかり、この地で窯を開くことにしたのです」

地元の土を用い、手間をかけて粘土づくりから行うスタイルは今も変わらず。「窯を開いてから近くで釉薬の原料になる黒石も見つかりました。この黒石を瑠璃釉に使うと落ち着いた色合いを出すことができます。最近、この辺りで新たに赤土が見つかったのですが、白化粧とよく合う土なので作陶の幅が広がりそうです」

なによりも形にこだわる山下さん。蹴りロクロを操り、美しいフォルムの器を成形していきます。「形は器の骨格、釉薬は衣服です。形が良くないといくら着飾っても良い物になりませんから、骨格である形はしっかりとつくらなければいけません」

製作風景動画

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延興寺窯 山下清志さんにインタビュー

暮らしに馴染む素朴な美しさを表現する山下さん。その源はどこにあるのでしょうか。「師匠から李朝時代の物をつくれと言われ、最初はなんのことかわからなかったのですが、吉田先生と関わり、民藝の世界にふれ、『民藝の原点を見よ』と言われていたんだと解釈できるようになりました。民藝の父である柳宗悦は、李朝時代の工芸品を見て手仕事の美しさを知り、民藝活動を始めていますからね。

李朝時代の器は、凛とした美しさのなかに温かみやおおらかさを感じさせ、いろいろなヒントを与えてくれます。インスピレーションを感じながら、食卓に並ぶ様子をイメージして、使い手にとって良い器をつくり続けていきたいですね」


延興寺窯

[住]鳥取県岩美郡岩美町延興寺525-4
Tel 0857-73-1219

[時]10:00〜17:00 
[休]不定休
※訪問時は要連絡、工房見学可

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KAJICURRY(鳥取県鳥取市)

今回ご紹介の「延興寺窯」や前編でご紹介した「因州・中井窯」「岩井窯」のほかにも、鳥取県内には素敵な器をつくる窯元がずらりと揃います。そんな鳥取の器の魅力を体感できるのが「KAJICURRY(カジカリー)」です。「カレーと手仕事の器」をコンセプトに掲げ、完全予約制で注文時にまずは器を選ぶというユニークなスタイル。JR鳥取駅から徒歩4分とアクセス便利な場所にあり、鳥取を訪れたらぜひ立ち寄ってみては。


鳥取の器と食材にこだわって

6つの窯元がつくる21皿がスタンバイ。写真は独創性豊かな模様を持つ「牧谷窯」「山根窯」の作品です。「器や食材から鳥取を楽しんでもらいたい」と話す店主の梶川さんはアパレルのセレクトショップを営んでおり、「洋服を試着するように、ここで鳥取の器を試しに使っていただき、窯元さんの想いもお伝えしていきたい」と語ります。

器を選ぶスタイルだけでなく、食材にも並々ならぬこだわりが。メニューはトマトベースの「レッドカリー」とココナッツベースの「イエローカリー」の合いがけが基本。おおよそ1カ月半ほどのサイクルでメニューが変わり、鳥取の旬の食材がふんだんに盛り込まれます。

写真は、あごだしと味噌を使った旨味たっぷりのココナッツベースに、地元の豆腐や油揚げをトッピング。さらに、鳥取の魚介を使ったスパイシーなアヒポケ(魚の漬け)も。辛さはほどほどに、食材それぞれの旨味や食感が生かされ、カレー目当てに訪れる人が多いのも納得の味です。


人気の秘けつは体験!?

11:00~、12:00~、13:00~の3部制で完全予約としているのは、器や食材をゆっくりと楽しんでほしいという梶川さんの想いから。注文を受けて配膳するだけでなく、器はもちろん、使用する食材も丁寧に説明してもらえます。好みの器を選び、鳥取ならではの食材を知り、意外な食材の組み合わせに驚き、最後の仕上げに実食。鳥取の魅力を五感で体験できる仕組みも人気の秘けつです。


KAJICURRY

[住]鳥取県鳥取市扇町138

[時]火曜〜金曜の11時〜14時ランチ営業のみ
※完全予約制・限定21食、11時・12時・13時の3部制
※予約受付は前日15時〜当日10時半まで

[料]カレー1,650円〜 ※時期により異なる

予約などの詳細はInstagramをご覧ください

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