Disaster prevention

暮らしを少し見直して、 もしもに備える

災害への備えは、必要と感じていてもなかなか手が回らないことが…。そこで今回は、ムリなく楽しく続けられる“もしもの備え”に着目。キャンプの知識や経験を活かした「ながら防災」を提唱するCAMMOCの共同代表 マミさんにお話をうかがいました。日常生活の中でムリなく防災を取り入れるライフスタイルをご紹介します。

CAMMOC(キャンモック)

3人のママキャンパーによるクリエイティブユニット。防災士やキャンプインストラクターの資格を有し、「キャンプのある暮らし」をテーマに地球の未来を創造する会社を運営。キャンプ歴はそれぞれ20年以上。自分に合う暮らしや防災を探求し、キャンプを通して無理なく無駄なく楽しく続ける防災法を提唱するほか、テレビ・ラジオ出演、執筆やイベント登壇など、幅広く活躍する。

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「ながら防災」とは?

キャンプの楽しさをもっと広めたい

— CAMMOC誕生のいきさつや「ながら防災」を提唱するきっかけを教えてください。

「もともとスノーボード仲間だった友達からキャンプに誘ってもらったんです。自然の中で自由に過ごす時間がすごく楽しくて、一気にキャンプにハマりました。当時は、まだ女性が1人でキャンプすることが珍しかったんです。誘ってくれた友達と『こんなに楽しいならもっと多くの人に知ってほしいよね』って話になり、キャンプイベントを始めたのが、CAMMOC誕生のきっかけですね」

キャンプが防災につながる

「それから楽しく活動を続けていたら、雑誌のスタイリングなどキャンプ関連の仕事を少しずついただけるようになりました。そんなとき、台風直撃のニュースを知って、何か準備しなきゃと思ったら、『あれ? うちにはすでに必要なものが全部ある』と気づいて。それが全部キャンプ用品だったんです。台風のときにライフラインが停まるのが一番の心配でしたが、それってキャンプと同じだなと。

約10年もキャンプに関わる仕事をしていたのに、防災に活かせるなんて一度も考えたことがなかったんです。ちょうどその頃、キャンプを広めるだけでなく、もう少し社会的に意義のあることがしたいなと考えていた時期でした。そこから防災について勉強し、防災士の資格を取って、“ながら防災”の発信を始めるようになりました」

暮らしをより豊かに便利にするもの

— 「ながら防災」の大事なポイントとは?

「いつもの暮らしを圧迫しないことですね。むしろ、普段の生活がより豊かになったり、便利になったりすることが前提です。『心配だから備える』じゃなくて、『楽しそうだからやってみたい』と感じていただくくらいのほうがいいと思ってます。

たとえば、私はドライフードを手づくりしているんですが、普段から美味しくて健康的で便利な食材として使いながら、いざというときのストックにもなります。『備えなきゃ』ではなく、『これが好きだから取り入れていたら、防災にもなっていた』という順番で考えると、取り入れやすいし、長続きしますよね」


住まいの工夫

リビング

— 一戸建てをセルフリノベーションされたマミさんのご自宅。防災のために、どんな工夫があるのでしょうか?

「まず、落ちてきて困るような物をなるべく置かないようにしています。高い所に物を置かないようにするだけで安心感が全然違いますね。潤いを与えてくれる植物が大好きで、昔は小さい鉢をたくさん置いていたんですけど、防災を意識するようになってからは、大きくて重さのある鉢に変えました。倒れにくいですし、水やりも少なくて済むし、見た目も華やぎます。高い所には鉢が不要なドライフラワーやフェイクを飾り、重い物は避けるようにしています」

「植物の鉢には、フタをしています。フタがあることで、植物がグラグラするのを防いで安定感が増す上に見た目もスッキリします。うちのペットが土を食べちゃうので、それを防ぐ効果も。リビングに仕事で使うパソコンを置いていますが、地震の揺れで倒れないようクランプという金具で固定しています。サイズがぴったりで、あまり目立たないのもいいですね」

キッチン

「よく使う食器は、出し入れしやすいようオープンラックに収納しています。ホーローや木など落ちても割れにくいものを中心にして、割れ物はなるべく扉付きの棚に入れて、地震による飛び出し防止のためロックをつけています。あとは、包丁だけは使ったらすぐにしまうようにしています。子どもが料理を手伝ってくれるときも、包丁だけは『使ったらしまう』と徹底しています」

寝室

「家にいるときに地震が起きたら寝室へ避難します。そのため、たとえリビングが散らかっていても、寝室だけは常に安全な空間をキープ。防災バッグは玄関か寝室に置くのがおすすめなのですが、うちはスペースに余裕がある寝室に置いています。防災用品も壁の有孔ボードにハンギング。せっかく置くならできるだけ可愛く収納したいと思い、インテリアに馴染むように工夫しています。植物の鉢植えやワゴンは掃除しやすいようキャスター付きにして、普段は地震対策としてフック有孔ボードに固定しています」

洗面室

「お風呂掃除用のスリッパとタオル素材のバスポンチョを浴室から手に取りやすい位置に。お風呂に入っているときに揺れを感じたら、すぐに逃げられるようにしています。浴室や洗面所は裸でいる可能性が高いので、落ちてきたら危ないものは外に出さないように注意しています。あと、洗剤などは多用途で使えるものを選んでいます。界面活性剤の入っていないものを使いたいのと、使い分けしなければ物が減るし、管理も楽になり、もしものときに入手できなくて困るということも防げます」

玄関

「もとともと下駄箱があったんですが、扉があると出し入れが面倒になってくるので、オープンラックにして落下防止のゴムを取り付けています。オープンにしておくと、おでかけに必要な物がサッと取り出せて便利ですよ。防災ポーチや消火器、ランタン、レインウェアを置き、アウトドア用の登山靴もすぐ履けるように出していて、いざというときは、これらを持ってスムーズに避難できるようにしています」


ペットのもしもを考えて

「リビングにペット用の物はトイレと水だけを置いています。いざというときに環境が変わっても、できるだけ平常心でいられるように、犬のおもちゃなど『ここにこれがあるのが当たり前』という状態をつくらないようにしています。キャンプにも連れていき、家以外の環境にも馴染めるように。また、もしものときにいつものドッグフードが入手できないことも考えられますから、お出かけ時には普段とは違うお試しサイズのものをあげて、他のフードにも慣れてもらい、『これじゃなきゃだめ』とならないよう心がけています」


後編では食品などの備えやおすすめアイテムなどをご紹介。8月下旬に公開予定