新型コロナウイルス対策で
誤解されていることが多い?

寒くなるにつれて、新型コロナウイルスだけでなくインフルエンザなど、あらためてウイルス対策が気になります。実は、手洗いや消毒で誤解しがちなことがいくつかあり、正しい知識と方法を知っておきたいところ。そこで今回は、ウイルスに効果的で肌にも優しい手洗い、正しい消毒について、ナチュラルクリーニング講師の本橋ひろえさんにお話をうかがいました。

本橋 ひろえさん

ナチュラルクリーニング講師。北里大学 衛生学部化学科卒業後、化学薬品会社で合成洗剤の製造を担当。2006年より、東京を中心に各地でナチュラルクリーニング講座を行い、幅広いメディアで活躍。また、最近は雑誌やムック本、 Webメディアなどで、新型コロナウイルス対策としての手洗い・消毒などに関する取材協力や監修も行っている。

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新型コロナウイルス対策に不可欠な界面活性剤

界面活性剤の効果とは?

界面活性剤は、図のように油汚れに吸着し、引きはがす力があるのが特長です。この力によって、新型コロナウイルスやインフルエンザウイルスを覆うエンベロープ(脂質の膜)を壊し、無害化させることができます。

そのため、新型コロナウイルスやインフルエンザの対策は、界面活性剤(石けん)を使って手洗いすることが不可欠といえます。ただし、すべてのウイルスに有効ではなく、ノロウイルスやロタウイルスには効果がないので、注意が必要です。

石けんと合成界面活性剤の違い

界面活性剤は、ものすごい数の種類があり、その中には「石けん」が含まれています。ただ、石けんのパッケージに「界面活性剤 」と記載する必要がないため、「石けん=界面活性剤ではない」と誤解されている人がいます。

界面活性剤は、「石けん」と化学的に合成された「合成界面活性剤」の2つに分けられ、どちらも新型コロナウイルス対策として使えます。界面活性剤と聞くと「体や環境に悪そう」と思われる人がいるかもしれません。高度経済成長期に、粗悪な合成界面活性剤が川や海を汚してしまい、その光景から悪いイメージを持たれているのでしょう。

実際は合成界面活性剤でも、さまざまな種類があり、石油など化学的に合成されたものだけではなく、オーガニックの油を使ったものもあり、 肌に優しいものから洗浄力が強くて扱うのが難しいものまであります。

おすすめなのは無添加の石けん

界面活性剤の中で推奨するのは無添加の石けんです。新型コロナウイルスやインフルエンザの対策ができ、洗浄力が強すぎないため、比較的、肌荒れの心配が少なく、使いやすいのがメリット。石けんが肌に合わない場合を除いておすすめしています。

合成界面活性剤だと、商品によっては洗浄力が強く肌への負担が心配になったり、肌荒れしないように保湿成分を入れることですすいでも落ちにくかったり、添加物が肌や使い心地に影響を与える場合があります。

成分表示の見分け方

無添加の石けんをおすすめするもうひとつの理由として、成分表示がシンプルでわかりやすく、見分けやすい点があります。無添加の石けんを見分ける成分はたったの3種類だけ。一方、無添加の石けん以外は、いろんな成分が入っていて、なにが肌に影響を与えるのかわかりにくく、化粧品と違って全成分表示の義務がないため、見分けるのも困難。こうした選びやすさも、無添加石けんのメリットといえます。

無添加石けんの成分表示は3種類のみ

<固形・粉 の場合>
脂肪酸ナトリウム

<液体の場合>
水・脂肪酸カリウム
水・石ケン素地


正しい手洗い&石けんの使い方

手洗いのポイント

手洗いは、石けんやハンドソープをつけてしっかりと泡立て、15~30秒かけて丁寧に洗いましょう。ただやみくもに洗うのではなく、以下の6カ所をきれいにすることを意識してください。特に手首は忘れやすいので要注意!

・爪 ・親指のつけ根まわり ・手の甲
・指の間 ・手のひら ・手首


拭き取るタオルは清潔に

せっかくきれいに洗っても拭き取るタオルが清潔でなければ意味がありません。タオルは、できるだけ毎回新しいものに交換するのが理想的。家族で同じタオルを使うのは、感染のリスクを高めるだけでなく、ぬれたままにしておくことで雑菌を増やしてしまう恐れもあるので、避けましょう。使い捨てのペーパータオルを使えば、タオルの交換の手間も省け、清潔な状態がキープしやすくなります。


固形石けんと液体石けんの注意点

固形か液体かを選ぶときは、使いやすいほうでOK。ただし、それぞれに注意点があります。

<固形石けんの注意点>

・使い始めに水に当て、しっかり泡立てる

・使ったら泡をしっかり水で洗い流し、ウイルスや雑菌が石けんに残らないように

・石けん置きは通気性のよい物を選び、素早く乾かし、雑菌の繁殖を防ぐ

<液体石けんの注意点>

・吹出口を触らない。ウイルスや雑菌が付くと、感染を広げる恐れも

・ボトルの詰め替え時は、洗ってしっかりと乾燥させる。水気が残っていたり、洗わずに継ぎ足すと雑菌が繁殖しやすくなる


必要なのは「除菌」ではなく「消毒」

除菌と消毒の違い

「除菌」と「消毒」の違いについて、誤解されている人が多くいます。除菌と書かれている商品は、主に雑菌数を減らす効果のみで、ウイルスの消毒効果はありません。ウイルス対策は“病原菌を無毒化”させる「消毒」が重要。そして、新型コロナウイルスの “無毒化”に有効なのは、前述の通り、石けん(界面活性剤)を使って手洗いすることです。

ウイルス対策の正しい「消毒」

消毒には、アルコール(消毒用エタノール)も有効です。ただし、手をきれいに洗っておかないとアルコールが汚れに反応してしまい、消毒効果がなくなってしまうことも。また、濡れたままではアルコール濃度が下がり、消毒効果が薄れてしまいます。

アルコールの濃度も要チェック。70~80%が理想で、90以上だと揮発してしまい、60以下だと消毒効果が低下します。

エタノール以外を使った消毒に注意!

肌や手指に使う消毒は、今のところアルコール(消毒用エタノール)しかありません。話題になった「次亜塩素酸水」は、消毒後に水に戻るといわれ、スプレーして使うこともできますが、物の消毒にしか使えません。日持ちしないのが難点で、置いておくだけで劣化し、消毒効果がなくなってしまいます。

次亜塩素酸水と混同して、塩素系漂白剤(次亜塩素酸ナトリウム)を薄めてスプレーして使う人がいるのですが、これは絶対やってはいけません。ガスを吸い込むと体に害をもたらし、とても危険。塩素系漂白剤は物の消毒には使えますが、使用の際はゴム手袋を使用し、よく換気をしてください。浸け置きで使ったら、しっかりすすぎましょう。


室内の消毒前に、こまめに掃除と換気を

部屋のなかを消毒する際に大切なのは、普段からきれいに掃除をしていること。ホコリがたまっていたり、カビや雑菌が繁殖しているところにアルコール(消毒用エタノール)を使っても、汚れや菌に反応してしまい、ウイルスの消毒効果が低下してしまいます。

梅雨どきだけでなく、気温が20度ぐらいのときは、カビや雑菌が繁殖しやすいため、こまめに掃除して餌となる汚れを取り除き、しっかり換気することが大切。押し入れやクローゼットなど、空気がこもってカビが繁殖しやすい場所は1日に1回でも戸や窓も開けて換気しておきましょう。


服やスマホにも目を向けて感染予防

外からウイルスを持ち込まないように手洗いを行いますが、スマートフォンや服にもウイルスが付着している可能性があります。新型コロナウイルスの寿命は3日程度といわれており、自宅内に持ち込んで感染を防ぐためにも、スマートフォンはアルコールで消毒したり、服は必ず洗濯しておきたいところ。

これから寒くなり、コートなどを選ぶ場合は、「自宅で洗濯できるものを選ぶ」という視点も、新型コロナウイルス対策として大切になってきます。


手洗いや消毒で誤解していたことはありませんでしたか? 本橋さんは「新型コロナウイルス対策は特別なものではなく、手洗いやお掃除を普段からしっかり行っていれば、自然と対策につながる」と話しています。肌への負担が少なく、住まいの快適さを維持しながら、継続的な予防につながるよう、日々の習慣を見直していきたいですね。