Comfortable life
たとえ忙しい日常でも、ちょっとした心がけや工夫で、ささやかでも心地よく心豊かな時間がつくれるはず。そんな暮らし方のヒントを、 BROCANTEのオーナー・松田尚美さんにお聞きしました。後編では、ブロカントと呼ばれるフランスの古道具と植物の素敵な活用方法をご紹介します。
松田 尚美さん
東京 自由が丘にある、フランスアンティーク家具の販売とガーデンプランニングを行うBROCANTE(ブロカント)のオーナー。家具・雑貨と植物で織り成すインテリアコーディネートに多くのファンを持ち、そのセンスやライフスタイルが注目されています。
「フランスの美しいものをお伝えしたい」との想いからBROCANTEを開いた松田さん。フランスに憧れ、魅了され続けている理由を尋ねてみました。
「もうフランスの全てですね。シャルル・ド・ゴール空港に降り立ったときのむせるような香水の匂いから始まり、帰路のエールフランス最終便で、荷物の重量制限であたふたするところまで。美しいものが当たり前のようにそこかしこにあり、美しいことがごく自然で、美味しい食材もすぐに手に入れられますし、フランスの風景を見て呼吸をすると、ものすごい幸福感に浸ることができます。幸せになる権利みたいなものが、日常にあふれていることに魅了されているのだと思います。また、“古いものこそ価値がある”と考えるフランスの人々に根ざす精神性にも共感しています」
子どもの頃から植物やインテリア、古物に興味があったと話す松田さんは、フランスの古道具(ブロカント) の魅力をこう語ります。
「存在が唯一無二というところです。たとえば、ぱっと見て同じようなテーブルでも、似ているようで全然違います。ブランドや銘柄に関係なく、フランスの歴史と暮らしの中で息づいてきたその美しい物を目にしたときに、言いようのない感動を覚えます。装飾された華やかな美しさではなく、その存在自体の美しさを感じているのだと思います」
BROCANTEの店内は、味わい深い古物と潤いのある植物を組み合わせて飾られているのが印象的。古物と植物を組み合わせることで相乗効果が生まれると松田さんは話します。
「古物そのものに生命力はありませんが、その古びたマテリアルに生き生きとした植物が入ることで、相乗効果が生まれるように感じます。味気ないプラスチックの鉢よりも、風合いのあるマテリアルと共にあることで美しさが増す時も。もちろん、古物と植物を合わせることが全てではなく、たとえ新しい花器でもデザインに無駄のない美しいものであれば、それはそれでモダンでよい雰囲気になるかと思います」
室内で植物を飾りたいけど、お手入れに自信がない…。そんな方に向けて松田さんに選び方のコツや注意点を教えてもらいました。
「室内だとカンガルーアイビーやフレンチゴムが比較的、育てやすいですね。植物もいろいろなタイプがあって、手入れする人との相性の良し悪しがあります。植物を選ぶ前にご自身の生活パターンを把握してみましょう。
たとえば、日々の水やりが苦ではないか。難しい場合は水が少なくてもよいタイプを選ぶなど、ポイントをおさえていただければ。あと、飾りたい場所の日当たりや風通しと、植物の特性を考慮するとよいかと思います。たとえ枯らしてしまっても落ち込んだりせず、またトライしていただきたいですね。
花器は、根のある鉢物であれば水やりが必要になりますので、水やりに適したものを選んでください。古物と組み合わせる場合、ブリキのバケツなどは、プラ鉢のまま入れて鉢カバーとして活用できますし、もし風化して底部に穴が開いているものは、直植えも可能です。
切り花を生ける場合は、直接水の張れるガラス類でしたら問題ありませんが、籠のような入れ物やホーローなど錆の心配のある物は向いていません。これらの入れ物に花を生けたガラス器ごと入れてカバーのような使い方がよいと思います」
BROCANTEの植物たちは籠を使って飾られているのがよく目に付きます。「籠も自然素材なので、植物と相性がよいですね。花器はこうではなくてはいけないという決まりはありません。日本人は、古い家屋と植物の混じり合いのような姿を無意識のうちに眺めていることが多いはずなので、古物特有の“時の静止したマテリアル”に“植物の生命感”が重なる姿に共感いただけるのではないかと思います。
身近にある生活雑器でもよいので、身の回りの古い物を器や花器のカバーとして見直されてはいかがでしょう。水やりのときだけカバーから外して、たっぷりと水をあげてください。そして、水をしっかりと切ってから器に戻せば、器と共に長く楽しんでいただけます」
BROCANTEの心落ち着くインテリアはどのようにして生まれるのでしょうか。コーディネートのコツを聞いてみました。
「感覚的ではあるのですが、家具や雑貨そのものの質感と色を見ているように思います。あまり多色使いが得意ではないので、ベーシックな色味を基調にして、ファブリックを変えて季節感を出しています。雑貨は長く眺めることが前提なので、飽きの来ない造りのよい物を選びたいですね」
細かな雑貨も上品に飾られているBROCANTEの店内。乱雑にならないように飾る秘けつはあるのでしょうか。
「部屋が乱雑になってくるのは、やはり物が多いときですよね。掃除も大変ですし、細かい物を細かく並べないようにしています。並べて見たい雑貨類は、ショーケースのような物にまとめるのがよいかと。ガラス越しに眺める方が綺麗な場合もありますし、ショーケースの中のディスプレイ替えも楽しめます」
古物を扱う松田さんは仕事柄、たくさんの物に囲まれて生活されているイメージです。物との付き合い方をうかがってみました。
「インテリアや雑貨が好きな方は、どうしても物が増えていくばかりの傾向があるかもしれません。部屋に対して物のボリュームを見極めるとよいかなと思います。『1つ手にしたら、1つ手放す』の法則を持つとコントロールしやすいですね。とはいってもなかなか難しいことですから、安易に物を選ばず、長く愛用できる物を選ぶのがよいかもしれません」
たくさんの家具や雑貨などの古物を目にする松田さんにお気に入りの品を聞いてみました。
「昔から空を飛ぶ鳥を見ているのが好きで、今でも朝目が覚めたときに鳥を見たり、夕方巣に戻る鳥を見上げて、気持ちを整えていることもあります。そのせいか、花鳥のモチーフが日・仏問わず好きですね。最近見つけたフランスのプレートは、どこか日本の器のような雰囲気もあり気に入っています」