Nordic life
スウェーデンで暮らし、YouTubeの人気チャンネル「猫と北欧暮らし tanuko」を配信するtanukoさんのライフスタイルを2回に分けてご紹介。今回は、スウェーデンでの暮らしぶりを教えていただきました。
スウェーデンでの丁寧で心豊かな暮らしをYouTubeで紹介されているtanukoさんは、どのような日常を過ごされているのでしょうか。「朝はまず猫たちのお世話から始まります。その後、家事や動画の撮影・編集、スウェーデン語の勉強などをします。天気が良ければ気分転換に外へ散歩へ行くこともあります。
YouTubeでは、自分が住んでいるような感覚になっていただきたいと思って配信しています。スウェーデンに住んだらどんな感じになるかイメージしてもらえたらうれしいです。日本にいた時は都会にいたせいか、いつも早歩きしているようなせかせかした毎日でした。こちらは自然が多く人も少ないので、流れている時間がゆっくりなような気がしています」
もともと収納好きというtanukoさんのご自宅はすっきりとしたインテリアが印象的です。「猫と快適に暮らせるように物はあまり置かないようにしています。でも、それだけだと寂しいので自分の好きな物を飾る棚を決めて、お気に入りの雑貨などを飾って楽しんでいます。
スウェーデンの住宅で少し驚いたのは、キッチンのゴミ箱がシンクの下に格納されていること。ゴミ箱が見えないだけで、生活感が抑えられてかなりすっきりします」
「日本の雑誌では北欧テイストのシンプルなインテリアを紹介されていることが多いと思います。私もそのようなシンプルな部屋が好きですが、スウェーデン人の友達の家を訪ねると、みんながシンプルでスッキリとした部屋を好んでいるわけではなく、自分の好きなものを集めてたくさん飾っている人もいます。
“居心地のよい空間で心からリラックスできる時間”をスウェーデン語で『ミューシグ』といい、スウェーデン人は自分や家族が居心地よく過ごせることを大切にしています。私は猫と居心地よく過ごせる部屋づくりを心がけていて、ソファーにカバーをかけて汚れても直ぐに洗濯できるようにしたり、猫も大好きなブランケットを置いて一緒に使っています」
YouTubeの動画の中で素敵なお皿や雑貨と出逢っているtanukoさん。欲しいままに買ってしまうと物であふれそうになりそうですが、どのように物と付き合っているのでしょうか。「アンティークのずっと欲しかった物やすごく心に響いた物はどうしても買ってしまいます。一期一会で今日買わなかったら次はないことも多いので。現行品でいつでも買える物は一度考えて、収納できる範囲で買うようにしています。
好きな物を飾る棚に置けないときは取っておいて、気分や季節に合わせてまた飾ってみたり。自分がすごく好きで買った物なので、できるだけ手放したくはないですね。やむを得ず手放すときはフリーマーケットに出品します。買ってくれた人の顔が見えるので、その人のおうちで大切に使ってもらい、新しい暮らしが始まるんだなと思うと安心できます」
「自分が本当に好きな食器は、盛り付けも楽しいし、十何年使っても愛着が持てるので、本当に欲しい物を買って使うことが大切だと感じています。こうした自分が生活の中で求めるものが、スウェーデン人の物に対する考え方に通じているように感じます。
スウェーデンの人々は、物を選ぶときに高いから良い物という考えではなく、“今の自分に合っているかどうか”を大切にしています。自分の価値観や身の丈、生活に合っているかを考えるのではないかなと。また、思い入れのある物を使ってるという印象もありますね。ブランド品だからとか、みんなが持っているからという理由で選ぶのではなく、あくまで自分に合った物を選んでいると思います」
「ランチの時間はサラダが人気で、サラダ専門店にはいつも行列ができています。夜は焼いたお肉や魚と茹でたジャガイモ、サラダといったメニューが多く日本のように何品も作りません。あと、週末はピザが人気でどの町にもピザ屋さんがあります。料理はせずピザを食べて、家族と過ごす時間を優先しているのではないでしょうか。
私は『ヤンソンさんの誘惑』というスウェーデンの伝統料理が好きです。ジャガイモと玉ネギ、アンチョビにクリームを合わせたグラタンのような料理で、簡単で美味しいのでよく作っています。なかなか生魚が売っていなくて、魚はほとんど冷凍で種類も少ないのですが、サーモンは美味しいですね。あと、乳製品も安くて美味しいです」
スウェーデンでの暮らしを満喫されているtanukoさん。丁寧で豊かな暮らしのために意識していることをお聞きしました。「季節の食べ物を採りに行くのを楽しんでいます。散歩をしながら街路樹に実っている洋梨やリンゴを採ってジャムを作ったり、森の中でニラを探したり。スウェーデンには『自然享受権』という自然の物はみんなの物という考えがあり、ベリーやキノコなどを自由に採ることができます。
あと、家の中に植物を飾って季節を感じたいのですが、猫にとって危険な植物も多いので、他の物で季節感を得られるようにしています。例えば、クッションのカバーを変えたり、ポストカードを飾ったり、ささやかですが季節の移ろいを楽しめるようにしています」
ピクニックや雑貨店を巡るtanukoさんのYouTube動画がとても印象的ですが、休日はどのように過ごされているのでしょうか。「天気が良い日は、コーヒーやお菓子を持って森に行くことが多いです。 夏は田舎にある自然に囲まれたガーデンカフェに行くのを楽しみにしています。都会に出て買い物をしたいときは、デンマークのコペンハーゲンへ行くことが多いです。私が暮らしているスコーネ地方は、コペンハーゲンへ電車で約40分で行けるので、ストックホルムへ行くより断然近くて行きやすいです」
素敵な雑貨が多いスウェーデンで、自分が本当に良いと思った物を愛着を持って使い続けるtanukoさん。お気に入りのアイテムを教えてもらいました。「一つ目はスウェーデンに興味を持つきっかけになったグスタフスベリのベルサの食器です。1970年代のアンティークで日本で買った物。もともとスウェーデンで誰かが使っていて、それが日本に来て私との生活が始まり、またスウェーデンに戻ってきて。こういう巡り合わせがおもしろいなぁと思います。
二つ目は、スウェーデンで見つけたムーミンの1dlの計量カップです。スウェーデンのお菓子は1dlカップで計量するレシピが多く、ムーミンの計量カップはかわいくてお菓子作りがより楽しい時間になりました。
三つ目が猫のキッチンタイマー。アナログな感じとふてぶてしい顔が好きです。たまに鳴らないことがあるのですが、それも許せちゃうくらい気に入ってます。
最後は、スウェーデンの絵本作家 エルサ・ベスコフ『いちねんのうた』のポストカードです。1月から12月までスウェーデンの自然や行事が1カ月ごとに描かれ、12枚セットになっています。ポストカードなので写真立てに入れて飾れる手軽さが魅力で、毎月替えて楽しんでいます」
スウェーデンにはたくさん素敵な雑貨店がありますが、それでもtanukoさんは日本がすごいといいます。「スウェーデンの雑貨屋さんはシンプルでナチュラルテイストの物が多いです。日本ではシンプルだったりポップでかわいかったりと、バリエーションという点では日本はすごいなぁと移住してから感じました。
こちらにも、日本が大好きで日本の雑貨を扱っているお店があります。改めて日本の雑貨を見ると、造りが丁寧でデザインもかわいい物が多くて、このお店を訪れるといつも癒やされます。日本の有名なアニメキャラはこちらでも人気があり、日本のかわいいはやっぱりすごいと思います」
スウェーデンの人々は冬をいかに心地よく過ごすかを大事にしていると話すtanukoさん。冬の楽しみをお聞きしました。「セムラという冬限定のお菓子が楽しみです。カルダモンのパンの中にアーモンドペーストを入れて、生クリームをのせるのですが、お店によっていろんなアレンジがあり、それを探すのが楽しくて。
あと、移住してから習慣になったのがキャンドルを灯すこと。フィーカや夕飯の時に灯すと気分が落ち着き、炎のゆらぎに癒やされています。冬は日照時間が短いので、本当に光が大切だと実感しています」
サフランのパン
ヤンソンさんの誘惑
ミルク粥
「スウェーデンでクリスマスによく食べるのが『クリスマスハム』『ニシンの酢漬け』『ミートボール』『ヤンソンさんの誘惑』など。クリスマスハム以外はイースターや夏至でも食べられるメニューです。クリスマスの4週間前から準備が始まり、アドベントと呼ばれる4本のろうそくを1週間ずつ灯していきます。その間、サフランのパンやジンジャークッキーを食べて、クリスマスまでの時間を楽しみます。
クリスマス・イブの朝食や昼食には、牛乳や砂糖でお米を甘く煮た『ミルク粥』を食べます。シナモンをかけていただくのですが、結構美味しいですよ。また、クリスマス・イブは恋人や友人と過ごすよりも家族と一緒に過ごす人が多いです。そして、クリスマスの飾りは年が明けてもそのままで、1月13日に片付けられるのですが、スウェーデンの人々がクリスマスをいかに大切にしているのかが伝わってきます」
スウェーデンのお隣「デンマーク」では、「Hygge(ヒュッゲ)」と呼ばれる心豊かな“巣ごもり”生活を営まれています。そのライフスタイルは、 “おうち時間”をより豊かにするヒントや工夫がたくさん詰まっています。ヒュッゲの文化を日本にいち早く紹介した芳子ビューエルさんに、お話をうかがいました。