Self care

無理をせず、心地よさを積み重ねて
心と身体を整える

植物療法士の鈴木七重さんは、ハーブや精油(エッセンシャルオイル)などを使った自然療法で心と身体を整えるセルフケアを提案されています。無理をせず、心地よさを積み重ね、自分らしく続けられる。そんなセルフケアのあり方を2回に分けてご紹介します。

鈴木七重さん

植物療法士 / ∴chimugusui Inc. 代表
自身の不調改善のために自然療法を取り入れ、20年以上にわたって実践。不調が改善し、心身が調和していく体験から本格的に植物療法を学び、講師として活動。ハーバルブランド「∴chimugusui(チムグスイ)」を主宰し、植物療法の魅力を広く発信している。著書に『ゆるめる温める巡らせる』『私を整える』があり、24年11月26日に『TJMOOK リンネル特別編集 ゆるめて、温める。幸せなからだ』を発売予定。

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鈴木七重さんのセルフケア

コロナ禍を経て、不調で悩む人が増加

オリジナルのハーブティーや精油を展開し、植物療法の講座などを行う∴chimugusui。主宰する七重さんは、コロナ禍を経て、不調で悩む人が増加していると話します。

「特に自律神経系の不調を訴える方が激増しているように感じます。これまでは、アレルギーや婦人科系疾患でお悩みの方が多かったのですが、ここ5年ぐらいは、ご相談のほとんどが自律神経の不調によるもの。スマホなどでブルーライトをずっと浴びていたり、無意識のうちに膨大な情報にふれていたり、常に神経が刺激されていることが大きな原因ではないかと思います」

リラックスするスイッチを意図的に入れる

自律神経は、活動するときに働く「交感神経」と、リラックスするときに働く「副交感神経」のバランスが大切といわれています。

「今の社会は、交感神経を刺激するものがすごく多くて、普通に暮らしていたら交感神経優位になってしまいます。つまり、リラックスするスイッチが入りづらい状態ですね。私たち∴chimugusuiは、ハーブやアロマを使って意図的に副交感神経を優位にすることをご提案しています。リラックスのスイッチをしっかり入れていただくためのライフハックとして活用していただきたいですね」

不調改善のために取り入れた自然療法

植物の力を借りて、リラックスのスイッチをしっかり入れる。これは七重さんご自身が実際に体験されてきたこと。

「大学を卒業してからデザイナーとして働き、年齢とともにちょっとずつ身体の不調を感じるようになっていました。でも、我慢して乗り切ろうと不調のサインを見て見ぬふり。それがだんだん積み重なって、とても辛い状態に。さすがにこのままではいけないと感じて、30代になって時間にゆとりができたこともあって、生活習慣を見直すことに。自然療法や植物療法も取り入れると、徐々に不調が改善していきました」


セルフケアで大切なこと

自律神経のケア=ゆるめるケア

七重さんは自律神経のケアとして、4つのステップを提唱されています。
01.私を受け入れる|体の声を受け入れる
02.私を解放する|自分に無理をさせない
03.私を整える|セルフケアの実践
04.私に還る|自分らしい人生を過ごすために

「自律神経のケアと聞くと、 “がんばって続けないといけない”と思いがちですが、全くそんなことはありません。体も心も不調のままで、まだがんばろうとするのではなく、むしろゆるめることが大切。ご自身にとって心地いいことを見つけて、ゆっくりと時間をかけて身体をケアしてあげることで楽になっていきます」

不調は身体の声。そのサインを受け入れて

「01.私を受け入れる」とは、どんなことなのでしょうか?

「私も昔はそうでしたが、なんとなく不調を感じながらも、つい我慢してしまいますよね。でも、やっぱり我慢はよくないです。身体は振り子のようにいつも揺らいでいて、不調があって傾いても元に戻ろうとする力があります。その揺らぎが小さなほうが、元に戻るのも早いですよね。放っておくとどんどん傾き、戻すのが大変になります。

自分の身体が辛い状態にあることを、まずは認識することがすごく重要です。不調は身体の声ですから、ありのままに受け入れること。身体の仕組みや置かれている環境、なぜ不調になったのか考えてみましょう」

自分に優しく、無理をしない

「02.私を解放する」は、ゆるめるケアとして暮らしを愉しむことだと七重さんは話します。

「不調に気づき、ケアをしようとすると“がんばって早く治します”とまだ無理をしようとすることがあります。特に大きな不調を感じる人は、がんばり屋さんで我慢強い人が多いので、まずは“がんばりぐせ”を手放してほしいですね。

治さなきゃって義務にするのではなく、今日1日をいかに気持ちよく過ごすかが大切。その積み重ねの結果、いつの間にか不調が感じられなくなることもよくあります。自分を縛るルールや無理をさせている考え方を手放してみてください」


心身を整える七重さんの日常

特別なことはせず、自然のサイクルと連動して

「03.私を整える」のセルフケアを実践する上で、日常生活において大切なポイントをお聞きしました。

「生活習慣を少し見直すだけでも、本当に変わるんですよ。心地いいと感じたり、健やかに過ごせるような習慣を取り入れると、すごく些細なことでも、 1日1日コツコツと積み重ねることで大きな力になります。

私自身も、朝に太陽の光をしっかり浴びたり、夜は明るい光を遠ざけただけで不調が治った経験があります。人間が古来から営んできた生活は、自然と連動していますよね。日が昇れば働き、日が暮れたら休む。これが健やかでいられる仕組みとして身体の中に備わっているので、意図的にこうした自然のサイクルと連動した暮らしを意識しています」


七重さんのルーティン

朝起きたら太陽の光を浴びる

もともと低血圧で朝は苦手。一時期、太陽の光も紫外線が気になってあえて浴びるようなことはしていませんでした。ある時、身体の不調を感じて、朝起きてカーテンを開けて、陽光をしっかり浴びるようにしたら体調がよくなりました。太陽の光を浴びるとセロトニンが分泌されて身体のスイッチがオンになるので、やっぱり大事なことですね。

1日1回は軽い運動を

毎朝、ウォーキングを行っています。メンタルがしんどいなと感じたときに、始めてみたら意外にもすごく楽しくて、不調もすぐに治りました。「散歩に行きたい!」って毎日思えるくらい自分にとっては好きな習慣です。また、毎朝リビングで姿勢をキープするトレーニングも行っています。姿勢が悪くなると自律神経を乱す原因になるのですが、トレーニングを始めたら姿勢がよくなり、呼吸がラクに。とても気持ちいいので、散歩と同じように毎日続けることができています。

旬の食材をいただく

昔は冷蔵庫がなく、流通も発達していないから自分の住んでいる場所で、その時々に手に入る食材を食べてきましたよね。こうした営みによって、長年にわたって人は健康を保ってきたと思います。今は年中いろいろな物を食べることができるからこそ、意図的に「旬」の食材を選び、昔ながらの営みで身体を整えるようにしています。なにより旬の食材は美味しくて、栄養価も高いですから。

夜は光を調整して、ぐっすり眠る

一度だけ不眠で辛い状態になったときがあります。その時、たまたま皆既月食で月を眺めながら心を落ち着かせる呼吸法を行ったところ、これまで味わったことのないくらい深い眠りを味わうことに。よく考えたら、光の影響が大きいんだなって。以来、夜は光の刺激を受けないように照明の明かりを調整し、部屋を暗くして過ごすようにしています。


後編ではハーブなどを使った「セルフケアの実践」をご紹介。12月下旬に公開予定