Nordic Lifestyle
エッセイストで子育て奮闘中の桒原(くわばら)さやかさんとスウェーデン人の夫オリバー・ルンドクイストさんにインタビュー。ノルウェーでの生活などでヒントを得て、実践されている北欧流の住まいづくりやライフスタイルを2回にわたってご紹介します。
桒原(くわばら)さやかさん
ライター・エッセイスト。イケア・ジャパンや北欧、暮らしの道具店で勤務したのち、夫と共にノルウェーに移住。約1年半を過ごしたのちに松本市へ。現在は、築45年の中古物件を自分たちでリフォームしながら暮らし、北欧のライフスタイルや家族と心地よく暮らすためのヒントを雑誌、Webメディアなどを通じて発信。著書に『北欧で見つけた気持ちが軽くなる暮らし』『北欧の日常、自分の暮らし』などがある。
— 桒原さやかさんは、スウェーデン出身のオリバー・ルンドクイストさんと結婚後、日本からノルウェー北部にあるトロムソへ移住。北極圏に位置するこの街へどうやって移住されたのでしょうか?
桒原さん「旅行で訪れて、こんな所に住んでみたいなと。ちょうど季節は冬で、一面の真っ白な雪がすごくキレイで。私もオリバーも、決まった所に根を下ろして住み続けるより、いろんな所で暮らしてみたいと思っていたので、帰国してから移住の方法を探りました。運良く、ノルウェーでオリバーの仕事が見つかり、トロムソへ移住することに」
— 憧れだった北欧への移住。どんな暮らしだったのでしょうか?
桒原さん「冬はオーロラも当たり前のように見ることができ、美しい自然や街の明かりも楽しむことができます。ただ、引っ越したのが6月くらいだったので、まだ肌寒い日も多く、緑も少なくて、少し寂しい感じにも見えて…。北極圏にある街なので、娯楽も日本と比べてすごく少なく、街もシーンとした感じ。
トロムソで暮らす人に限らず、北欧の人たちは、厳しい自然環境の中でも自分たちが心地よく楽しく生きるための術をちゃんと持っています。でも、私はその術を持っておらず、うつうつとした気持ちになったときも。その中で、自分と向き合う時間を持てたのはよかったですね。私は好きなことややりたいことをあまり持っていないのに気づけたのが一番の収穫だったと思います」
— トロムソの街で出会った人々からどんなことを気づかされたのでしょうか?
桒原さん「何においても、すごく自然体に見えたのが印象的。仕事もムリをしているように見えないし、子育ても力が抜けていて、自分の趣味がしっかりあって、暮らしを楽しんでいる様子でした。そういうのが自分にはあまりなくて、すごくいいなと」
オリバーさん「北欧の人はすごく合理的です。朝は8時から仕事に取りかかり、16時になったらサッと帰って家族との団らんを楽しむ。食事も平日は本当に質素。週末になるとレストランでちゃんとしたディナーを味わったり、力を抜くところと、こだわるところのメリハリが効いていますね」
—トロムソで1年半ほど暮らし、日本へ。次の移住地はどのようにして決めたのでしょうか?
桒原さん「日本に帰りたいというのは2人とも意見は一致していましたが、どこで暮らすか、特に決めていませんでした。北海道から九州まで自分たちが好きそうな街を実際に訪れて、この松本が自分たちに合っていると感じました」
オリバーさん「ノルウェーで学んだことを日本でも自分たちの暮らしに取り入れたいから、松本だったらできそうだなと。街の規模もさほど大きくないし、自然が身近にあるし。寒い場所は環境が厳しい分、人と人の距離が近いのも北欧流の暮らしにぴったりと感じました」
— 松本市内の賃貸マンションでしばらく暮らし、築45年の住宅を手に入れたお二人。オリバーさんがDIYで、リフォームを進めたそうですね。
オリバーさん「配管や電気といった専門的なものは業者さんにお願いしたけど、その様子を見ながら質問したり、自分で勉強して、ある程度のことは自分でできるようになりました。スウェーデンにいた頃、部屋の壁紙が飽きたら自分で塗ったりして変えるのは当たり前だったから、賃貸住宅だとそれができない。やっぱり思い通りにしたくて、自分の家を持ちたいと思いました」
— 純和風の住まいに、北欧スタイルをミックス。居心地のよい素敵な住まいは、どのようなコンセプトでつくり上げてきたのでしょうか?
桒原さん「家を購入したとき、子どもはまだ1歳半、しかも妊娠もしていて。本当に大丈夫なの?って心配でした(笑)。でも、オリバーがちょっとずつDIYで気になるところを良くしてくれて、完璧を求めなくてもいいんだなと。ちょっとずつ進めて、いつか完璧になればいいくらいに思っています。がんばり過ぎない北欧の人たちの考え方から影響を受けているのかもしれませんね」
— お二人が心地よい暮らしを叶えるために、大事にしているポイントをお聞きました。
オリバーさん「北欧の人は、“悩んだらまずは白”というのがあるんです。飾りは抑えて、白色の部屋からどんどん自分らしくアレンジしていく。あと、日照時間が短いから、とにかく家中に光が回るのもすごく大事。明るい色を使ったり、細かい物は少なめに、ドンと気に入った物を何個か置いたり。空白や動線も大事にしながら、リフォームしています」
桒原さん「全部を変えるのではなく、障子や装飾など、もともとあった物で好きな部分はあえて残しています。私が大事にしたポイントはテレビですね。テレビは置かず、プロジェクターを設置して、スクリーンに映しています。せっかく木の温もりが感じられるリビングなので、無機質で真っ黒の大きな画面があるのはインテリアとして嫌だなと。
それに、テレビがあるとつい見ちゃいますよね。そういうテレビ中心の生活ではなく、もっと家族で会話できる空間にしたかったんです。そのため、リビングには円を描くように、ソファやパーソナルチェア、クッションチェアをたくさん置いています」
— 真っ白な壁や家具をベースにしたスッキリとした空間の所々に素敵な壁紙や飾りが配置され、素敵なインテリアですね。
桒原さん「まずは白って大丈夫かなと思いましたが、ベースがキャンバスのように白で統一されていると、あとから自分たちが好きな壁紙を貼ったり、絵を飾るだけで、自分が好きなようにアレンジしやすいと感じています」
フリーランスのエンジニアとして、自宅で働くオリバーさん。陽当りのよい仕事部屋には、2つのデスクがあります。
「立ちながら仕事ができるスタンディングデスクを置いています。ノルウェーで働いていたオフィスにあったのですが、集中力が高まるし、血行も良くなるので、今も気に入って使っています」
後編では北欧流の家事・育児の工夫をご紹介。2月下旬に公開予定