Nordic Lifestyle

自分らしく心地よく暮らせる
素敵なインテリアをご紹介

約20年にわたって北欧の国々を訪れ、北欧のインテリアやライフスタイルの魅力を発信する森 百合子さん。北欧エッセンスを取り入れた素敵なインテリアをご紹介しながら、自分らしく心地よい暮らしを叶えるヒントを探求します。前編では、リビング・ダイニングを中心にお話をお聞きしました。

森 百合子さん

北欧ジャーナリスト、エッセイスト
北欧の暮らしやインテリア、旅をテーマに執筆。主な著書に『探しものは北欧で』(大和書房)、『日本の住まいで楽しむ 北欧インテリアのベーシック』(パイ インターナショナル)など。築約90年の古民家に暮らし、北欧デザインを取り入れたリノベーションや暮らしの愉しみも伝える。執筆のほか、講演、イベント企画や監修に携わり、メディア出演多数。北欧ヴィンテージ食器とテキスタイルの店Shop Stickaも運営している。

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北欧の建築・デザインに魅せられて

北欧に興味を持ったきっかけは建築の巨匠

— 森さんのご自宅に貼られたポスターに、フィンランドの建築家 アルヴァ・アアルトの作品があります。アアルトから影響を受けたそうですね。

「北欧に惹かれたきっかけは、アアルトのデザインです。日本で開催されたアアルト展で初めて見て、気持ちを掴まれました。ポスターにも写っていますが、図書館の天井が波打つように曲線を描いていたり、シンプルなんだけれど特徴があって、これは実物を見てみたいと思ったんです。もうひとつのきっかけはダンス。スウィングと呼ばれるダンスを趣味で続けていて、いつかレッスンを受けてみたいと思っていた先生がスウェーデン人でした。それで最初の北欧旅はアアルトの建築巡りとダンスを体験するのが目的でした。現地のダンス仲間のおかげでサマーハウスを訪れたり、日常をのぞき見る機会もあり、北欧の暮らしやインテリアへの関心が深まっていきました」

北欧で見つけた「理想的な普通の家」

— 北欧のインテリアデザインのどんなところに惹かれたのでしょうか?

「北欧を訪れて、いいなと思ったのは、特段インテリアやデザインへの造詣が深いわけではなさそうな友人が、それでも“ちょうどいい”感じの部屋に住んでいること。それまでは雑誌で紹介されるようなお洒落なインテリアって、デザイナーとか限られた特別な人たちが住むものと思っていました。でも北欧では、お金をかけられなくても、特別な知識がなくても、居心地のいい住まいをつくることができるんだなあと、感じて。会話の中でインテリアの話題もよく出ますし、家具や照明だけでなく、食器など日用品にもいいデザインが多く、興味は尽きないですね」

北欧インテリアとは

— 北欧のインテリアはどのように成熟していったのでしょうか?

「北欧は今でこそ豊かなライフスタイルの国として知られていますが、20世紀初頭まではヨーロッパの中でも貧しい国でした。それゆえ資源を無駄にせず、長く使えるデザインが求められたという背景があります。住宅事情も特に都市部は不衛生だったり狭かったりと問題が多かったのが、例えばスウェーデンでは1940年代頃から国家主導の住宅政策が進められ、戦後に実を結んでいきます。一方で現代的な暮らしに合わせた家具や食器へのニーズも高まり、『日々の暮らしを美しくしよう』といったスローガンのもと、機能的で美しいデザインの製品が生まれていきました。北欧では世代を超えて使い続けられるデザインが多いですが、こうした背景を知ると、必然的にそうなったのだなと思います」


自分らしく心地よく過ごす空間づくり

— 築約90年の古民家をリノベーションした森さんのご自宅。温かで、つい長居してしまいそうな居心地のよさがあります。インテリアをどのようにつくりあげていったのでしょうか?

「当初は、北欧で見るような白い部屋に憧れて、柱などを白く塗ることも考えていました。でも、この家の個性を活かしたいと思い、柱や鴨居など和の部分はそのまま残すことに。前の住み手が壁や天井を抜いたり、レンガを使ってデコラティブな装飾をしていたので、元の状態に戻してあげたいという思いもありました。そうした方が、既に持っていたチーク材のヴィンテージ家具との相性もよさそうでしたし、それで大工さんとも相談しながら、床材や仕上げについて決めていきました」


明るく寛げるリビング

寛ぎのスペースとなる窓側は、天窓と白い勾配天井によってテキスタイルが映える明るい空間に。ローテーブルはイギリスのヴィンテージ家具で、ミッドセンチュリーの曲線を活かしたデザインが印象的。ヴィンテージのデンマーク製ペンダントライトとうまく調和しています。「ソファではリラックスして過ごしたいので、脇に置いた本棚には、できるだけ仕事とは無関係の本だけを置くようにしています」

森さんが座り心地で選んだというリビングソファは、実際に座ってみると身体へのフィット感が絶妙。スウェーデンのデザイナー、ブルーノ・マットソンが日本の住宅に合わせてデザインしたものです。また、キノコのような黄色のポータブル照明は、ヴィンテージのような雰囲気ながらも現行品(アンドトラディション フラワーポット VP9 マスタード)。「照明はもう増やさないようにと思っていたのですが、デンマークの友人宅で実際に使われているのを見たら欲しくなってしまいました。部屋のアクセントになり、ポータブルで使えるのも便利です」

カーテン代わりに掛けられたスティグ・リンドベリのテキスタイルや、壁には愛らしい小物などが飾られています。それぞれ個性がありながら、まとまりがあるのは、モチーフや色のトーンがそろっているから。「北欧スタイルというと、すっきりシンプルな部屋のイメージがありますが、実際には物がたくさんあるなあと思う部屋も多いです。でも色合わせがうまいのかあまり雑然と見えない。色と色、柄と柄の組み合わせも上手で参考になります。わが家でもカーテンにしたテキスタイルの色に合わせてまわりの雑貨を選んだり、飾る物の素材感を合わせるなど、まとまりを意識しています」


パブリックスペースのリビング

リビングの中心には、来客時や仕事の打ち合わせにも使われるという大きなテーブルが。リビング全体が廊下やダイニングよりも1段低い設計となっています。「アアルトの自邸を訪れた時、仕事部屋とリビングの間に段差をつけて空間を区切っていたのを見て、わが家にも合いそうなアイデアだなと取り入れました。床板は、もともとはヘリンボーンに張りたかったんですが、高価なのと『木材に無駄が出る』と大工さんに言われて断念。でも斜めに張ったことで、空間にリズムが出て気に入っています。家具の雰囲気に合わせるため、床は自分たちで色付きのワックスを塗りました」

リビングのコーナーには、シンメトリーになるよう2枚のポスターを配置。素敵なインテリアの“こなれ感”は、同じ種類の絵やフレームをそろえるのがコツのようです。「ポスターは、デンマークの老舗アイスクリームメーカー『Hansens(ハンセンス)』のもので、このイラストレーターさんの作品が好きで。角に置いている棚は、専用のコーナー家具ではなく、普通の本棚を角に合わせて置いているだけなんです。奥の隙間が見えないよう、コーナーの形に合わせて加工した天板を置いています。天板にも床と同じワックスを塗って統一感を出しました」


おこもり感が心地よいダイニング

リビングとカウンターで緩やかに仕切られたダイニング。リビングと比べて小ぢんまりとしたスペースは、おこもり感があって落ち着くスペース。「窓や天井、壁など、この家のもともとの状態がいちばん残っている空間です。雰囲気がいいのか、ほどよく狭いのがいいのか、来客時も気づくと友人たちがここに集っていることもあります」


「ラーゴム=ちょうどいい」でムリせず豊かに

— 北欧では、居心地のいい素敵な住まいで暮らしているというお話が印象的でしたが、その根底にはどのような考え方があるのでしょうか?

「スウェーデン語に『ラーゴム』という言葉があって、これは『ちょうどいい』とか『ほどほど』といった意味で使われるのですが、部屋づくりでも“自分にとってちょうどいい感じ”を知っている人が多い気がします。最初からばっちりつくり込むというよりは、住みながら変えていく。蚤の市やリサイクルショップが多くあって、手頃に家具をそろえたり、逆に自分が使わなくなったものは他に譲れる仕組みがあるのも大きいでしょうね。誰かにつくってもらうよりも、トライアンドエラーしながらでも自分にフィットする部屋をつくる、そういう意識が強いと思います」


後編ではキッチンや住まいの工夫をご紹介。2月下旬に公開予定


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