Beautiful Living

心地よい空間づくりの
ヒントを探って

奈良で人気のカフェ・雑貨店「くるみの木」を営み、空間コーディネーターとしても活躍する石村 由起子さん。ご自宅を訪ね、長年かけて育んできたインテリアの工夫をお聞きしました。 前編・後編を通じて、心地よい住まいづくりのヒントを探ります。

前編はこちら

石村 由起子さん

1983年、奈良市法蓮町にカフェ・雑貨店「くるみの木」をオープン。奈良町の観光案内施設「鹿の舟」や「まちのシューレ963(香川県高松市)」「湖(うみ)のスコーレ(滋賀県長浜市)」などもプロデュース。著書に『あふれる日々を、ととのえる。(PHP研究所)』『わたしの食器棚(PHP研究所)』『うつわ(青幻舎)』などがある。

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石村さんのものを選ぶ目

ご自宅の至る所で素敵なインテリアが目に映り、まるで“暮らしの美術館”のような雰囲気です。住まいは公団住宅から始まり、分譲マンション、一戸建てと5回替わったと話す石村さん。「住まいが替わるたびに、インテリアに関していろいろな実体験を得ることができ、仕事柄いろいろとものを置く場所もあったので、ものを買う練習、使う練習をたくさんできました」

目が喜ぶと、心も喜ぶ

―買う練習、使う練習を重ね、その経験から審美眼が磨かれたのでしょうか?
「両親が共働きで忙しかった分、祖母と共に過ごした時間の中で、自然と身についた感覚があります。それは『目が喜ぶと、心も喜ぶ』ということ。ものを選ぶとき、私が大切にしているのはまず見ること。目が喜んだ瞬間がスタートです。次に、素材や手触り、どのように作られているか、どう使うかなどを考えます。また、たとえどんなに素敵でも、価格が高すぎればあきらめるし、実際に使ったり飾ったりできるかどうか、今買うべきか、タイミングも考えます。どこに心惹かれたのかは言葉にしにくいけれど、目が喜ぶという感覚を大事にしています」


よいものを選んで大事に使う

― 家具でもアートでも器でも、心惹かれるよいものはそれなりの値段がしますね。
「インテリアに限らず、よいものは値打ちがあるからその値段がつくのだと思っています。たとえば、この水色のワンピースは、もう8年ほど着ています。シルクが入っているので決して安くはないのですが、大事に扱えば、10年でも20年でも着ることができます。シルクなので、くたびれたら寝間着にでき、最後まで使い切れます。ものを選ぶときはメリハリが大事。いいものを安くなったときに買うとか、消耗品など場合によっては100円均一のものを選ぶことだってありますよ」


ものはわが子と一緒

― 大事に扱う、最後まで使い切る。ものへの敬意を感じます。
「ものはわが子と一緒ですよ。一つ一つがわが子のようなもので、褒めてもらえたらうれしい。だから、しまい込まないですね。インテリアだったらちゃんと飾って楽しみたいし、お客さまにも見てもらいたい。食器もたくさん持っていますが、今日はこれ、次はこれというふうにお料理などに合わせて使い分けています。ただ、それでも納屋にしまっている食器や椅子があるので、もっとみなさんの目にふれられる場所をこれからつくろうと考えています」


時間をかけて成熟する暮らしの空間

変わるもの、残したいもの

― 石村さんにとって心惹かれるものやインテリアのお好みは時間と共に変化してきたのでしょうか?
「人は生きているから、見るものも感じるものも毎日変わっていく。だから、好みも変わっていきます。でも、変わらないこともありますよね。その両方があってこそ、バランスが保てると思います。店も同じです。長く続けていると、新しくしたいという気持ちが生まれますが、それによって、お客さまの思い出の場所を変えてしまうことになります。だから、変えていい部分と、変えなければいけないこと、そして変えてはいけないことを、いつも考えています。昔の生活道具には、若い人たちにも知ってもらいたい魅力があります。今もザルでお米をとぐのですが、金属のものとは違って、米がうまくまわるんです。こうしたものは変わらずに、使い続けたい、残していきたいと思います」


北欧からスタートし、フランスや韓国も

— ご自宅のインテリアは、北欧だけでなく、さまざまなテイストのものがありますね。これらは石村さんのお好みの変遷でしょうか?
「Yチェアを選んで北欧の家具からスタートし、フランスのものに興味を持ったり、その間に韓国のものも入ったり、日本のものでも結構楽しんでいたときも。そして、また北欧に戻ってきた感じですね。流行もあると思いますが、一周するのだなと思います。韓国へ旅したときに、李朝時代の家具に惹かれて購入したものは、今も大切に使っています。どこの国のものでも、どんなテイストでも、自分の目が喜ぶかどうか、それだけが大切ですね」


好きな自然とつながり、異なるテイストとも調和

― ご自宅のインテリアは、さまざまなテイストのものがあっても、うまく調和しているように感じます。やはり、石村さんの目を通したものだからでしょうか?
「北欧のものは、日本の建物にも、他の家具にも器にも合います。また、北欧の家具は木目などから自然を感じることもできます。私は自然が好きなんですね。やはりそこが自分の行き着くところだったと、あらためて感じています。また、フランスの田舎のものも好き。だから、比重はどこにというより、あれもこれも好きというところですね。アンティークのフランスのお皿を置いて、異なるテイストのものを置いていても、私の目が選んでいるから違和感がないのだと思います」


石村さんの素敵な飾り方

インテリアはシンプルに、飾りはさりげなく

― 落ち着きがありながら、インテリアのひとつひとつが活かされている。そんな素敵なインテリアで重要なのは色使いですね。
「私はおもてなしするときは、食をメインに考えます。色味はお料理に出てくるから、インテリアの色は白やベージュ、グレーといったシンプルなものにしています。だから、柄ものは一つもないでしょう。飾りはさりげないけれど素敵で、空間に落ち着きを与えてくれるトーンのものを選んでいます」


自然の美しさが感じられるもの

― 空間全体はシンプルでいて、個性的なものがアクセントにもなっているように感じます。
「仕事を通じて、たくさんの作家さんと出会えたことで、本当に大きなものをいただいたと思っています。玄関に通じるスペースには、好きな作家さんの木で作られたワインクーラーを飾ったり、私が海で拾ってきた石をガラス瓶に入れて置いています。自然の美しさが感じられるものがやはりいいですね」


光を通すガラスを飾る

― さまざまな形のガラスの容器も至る所にありますね。植物やアートをいれたり、飾り方も多彩です。
「光を通すものが好きなのだと思います。透明感が好きなのかな。ガラスは作り手によって、表情が異なるのもおもしろいですね。何を入れるかというよりも、どう見えるかで置いています。光を通すところに置きたいとか、そういう感覚があります」


整えることが暮らしの基本

―目が喜ぶと、心も喜ぶ。それは華美な装飾ではなく、整った空間のことも指すのではないか、と感じました。心がけていることがあるのでしょうか?
「慌てないために、整える。それが私の暮らしの基本ですね。使ったものは元の場所にしまう。わかりやすい収納を心がけていると、来客時にカトラリーを出すときも、場所を伝えれば動いてもらうことができます。また、祖母に教わったことがあります。子どもの頃、学校から帰ったらランドセルの中身を必ず全部出し、明日必要なものだけを入れ直す。今も仕事で使うバッグで同じことをしています。ゆとりとは、何もない状態ではなく、準備して整えることで生まれるもの。心も、同じように整っていく気がします。祖母がよく言っていました。『口紅を塗る前に歯を磨いていなければ、どんなに美しい色でも美しくない』と。見えるところより先に、見えないところから整える。その言葉を今も実践し続けています」


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